ここからアップするのはおおよそ2004年ごろに書いていたHPの記事。16年前か…。
竹村和子さんのお歳は私のいっこ上。大震災の年2011年末に悪性腫瘍で亡くなっている。竹村さんは亡くなり、小倉千加子さんは実業に移っていった。フェミの世界で、このお二人の考え方に惹かれていた私にとってはとても残念だった。お二人が活躍を続けていたら、2020年はもっと変わっていただろうか?
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値段から解るように、社会学の専門書。東京のウイメンズ・プラザに月1回集まって友達とひらいている読書会のテキスト。上野千鶴子の「構築主義とは何か」に続いてとりあげた本で、自分が今までの時代や文化の歴史的な流れの中でどうやって形作られて来たか、が痛いほど良くわかる。「第1章〔ヘテロ〕セクシズムの系譜」では、自分が見てきた、あるいは人に勧められてみてきた映画の背景が、自分では読み取りきれなかった部分まで懇切丁寧に読み解いてくれていて、思わず「そうだったのか!」。「ロマンティックな友情」と「愛」の境目はどこかなんて散々悩んだのに、こうやって自分の中に刷り込まれて来た幻想だったんだぁ。
「第2章愛について」は読んでいて、泣けてきてしまった。自分が振りかざしてきた「愛」って、美しい・ピュアな・神聖な、そんなものだとして大上段に掲げてきた「愛」なんて、中身を細かく細かく文節化、因数分解してみたら、とんでもなく暴力的な意味合いのものばかりだったって。108ページ後半からの2段の文章は、書き写して経文のように毎日自分を振り返るために読みつづけていようと思ったほど。
どの章も副題がついていて、それがまたぴったり。第3章はのタイトルは「あなたを忘れない—性の制度の脱・再生産」。母と娘の関係の中で、連綿と再生産される制度についての詳細な考察。「詳細な考察」なんて、たった5文字で書いてしまうのは申し訳ないくらい。この章が書かれるまでの竹村和子自身の「母性という制度」との対峙が透けて読めるような文章がつづく。章の末尾がすごい。「だから、わたしは忘れない、あなたの身体を、あなたの愛を、愛がもたらす階調のすべてをわたしが感じていたことを。(中略)性の制度はいまここで、あなたを忘れないわたしのなかで変貌を遂げはじめている。」