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むかしむかし、人知れずつくっていたHP④

4回目はさぼったので、タイトルで④とあるけど第5回目の原稿

第5回 他人に迷惑をかけなければ何をしても<自由>である
仮に絶海の孤島にたった一人で移住したとしよう。生活上の不便はさておき、「迷惑をかける/かけられる」という状況はこのような場所では考えられない。つまり、迷惑をめぐる状況は人が社会の中で生きていく時に起こるものである。迷惑だと感じるのはどのような場合だろうか?たとえば電車などに乗っている時、車内で大声でしゃべる集団、いちゃいちゃモードで目のやり場に困るカップルなどが思い浮かぶ。このような行動に不快感を抱く人も多いかもしれないが迷惑だと断定できるわけではない。迷惑をかける/かけないの境界線や内容は人により違っており、そのために衝突が起こる。大事なのは社会の中で、自分と他者双方に迷惑でないというルールを、社会全体の合意として決めるという考え方である。その合意の中に自由は存在するのであって、ルールを作ろうという合意そのものを課題は否定してしまう(A)。

自由の決定権は個人にはないのだが、課題のような考え方をするものが多い。自由の範囲を社会的合意で決めようとするその枠組みを越えて、個人の自由の範囲だとしてとられる行動は自分自身や他者にどのような影響を及ぼすのであろうか。

他者のある行動によって、引き起こされる迷惑という負の感情を考えてみる(B)。課題のような言葉は、前記のような行動をとったものが、公共のルール違反だと非難された相手に切り返すように言うことが多い(C)。非難する側は正論であるように断定するが、自分が判断の基準としている規範が、世代・性別や国籍・人種などによって違いがあり、変化していくものであることに思いが至っていない(D)。社会規範はいったん合意として成り立つと、納得できなくても従わないと制裁を受けるという罰を裏側に持つ。罰によって守られるということは、規範は自然な状態で「正しさ」として存在するのではないということである。罰があるゆえに自分が行いたい行動を押さえ、実際にとる行動とずれが生じると、当事者は自己の中で自分の欲求が引き裂かれる思いを抱く。規範に沿わず欲求そのままに行動できる者に対して、ねたみ・嫉妬とでもいうべき感情が、深層心理の中に生まれてくる(E)。これが関わりの中で生まれる不快・迷惑の中身である。

一方、野良猫を虐待し殺すというような、他者・人間が関わってない行動の場合や、規範を破る者たちは、負の感情から自由なのだろうか?規範を知りつつ破ることは規範からの自由という快感を伴い、また規範に縛られない自己をアピールすることにもある種の快感を得ている(F)。しかしこのことは規範という枠組みを持たないということではない。規範の枠を超えるという快感は、規範を守らない否定的な自己認識と表裏となって、自分自身の中に沈殿していく(G)。他人に迷惑をかけてないと主張して得た自由は自分自身を傷つけることになるのである。

講評 
他人に迷惑をかけなければ何をしても自由であるという課題に対して、自由は個人そのものにはなく社会的な合意によること、また負の感情という点から考察された作品です。展開に複雑な点は見られますが、興味深い視点が多い大変読ませる論述です。また、全体的に、他人の考えを借りず、自分で物事を考えようとする姿勢が伝わってくる点も評価できます。以下展開にしたがってコメントしてゆきます。

まずAの部分の指摘では、自由が社会による合意を根拠としている点が鋭く捉えられています。課題の中の考え方の中に合意という観点が欠如しているという指摘は妥当なものでしょう。ここまでの展開は非常にすっきりしたものですが、次のB、C、Dの部分のつながりがわかりにくいです。というのも、Bでは、これから迷惑という負の感情が論述されるとされているのに、Cでは課題のような言葉は非難された相手への切り返しとして出る言葉であること、そしてDでは非難するものの根拠が絶対的なものでないことが述べられています。要するにB、C、Dそれぞれの意味は解るのですが、つながりが明確ではありません。展開としては、BからすぐにEのことを論じたほうがよりすっきり行くでしょう。

そのうえで、Cのようなリアクションがありうることを示せばさらに明確な展開となるでしょう。最終段落のFの指摘は鋭いものです。ただし、Gの部分の記述がよくわかりません。抽象度が高いので、具体的な記述が必要だと思います。例えばFで述べられているような規範を破ることに快感を抱き、自己価値を感じるような人間の中には、どのような負の部分があるのか、と考えても良かったでしょう。

展開がもう少しすっきりして、Gの結論部分が具体的なものとなったらこの論文はさらによくなったでしょう。

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