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気になるTV②

気になるTV② CM三菱モータース

穏やかそうなおじいさん…というにはちょっと早い、退職して10年くらいのおじいさんが小脇にセカンドバックを抱え道を歩いている。しっかりとした足並み、行進のような歩き方。あの年代だと、戦時中を過ごしていることを歩き方から想像させるような歩き方。後ろから、いかにも今風のフリーターっぽい若者に追い越される。ヘッドフォンで何かを聞きながら歩いているその若者のいでたちは、ピアスをして、本人だけがそう思っていない無精ひげ、あごを突き出し腰を落とした歩き方がおじいさんと対照的。

 

追い越されたおじいさんがむっとして、早足になり、その若者を追い越し返す。にんまり笑うおじいさんと、追い越されてはっと&むっとする若者。歩道橋で2段3段飛ばしに登る若者に再度追い越されたおじいさんは、曲がり角で道なりに行く若者を、コーナーをショートカットして再度追い越す…。そこで音楽と「負けず嫌いな人たちへ」とキャッチコピーが入る。

 

三菱モータースのCMで、ある特定の車種のCMではない。負けず嫌いな人たち、ではなく、負けることが許されない人たち、今も男性に「負けるな」という言葉は魔法のようにすりこまれているんだ、と改めて気づかされる。このCMのラストは…。競争のように競って歩いている二人、はっと気づくと颯爽と歩くスーツ姿の美しい女性に追い越されている。靴音から多分ヒールの高めの靴を履いてるだろうこと、ジャラジャラと音がすることから、アクセサリーなどをたくさん身につけているだろうということが匂わされる。追い越され一瞬唖然とする二人の男性、我に帰ってその女性を追い越そうとし、一方女性はそんな二人にまったく気づかない、というころでCMは終わる。この場面は何を伝えているのだろうか?この後に続くシーンを想像してみよう。追い越された女性も、むっとしてその競争に加わるのか、そんな価値観は無縁よと嫣然と微笑みながら歩いているのか?

 

これまでの男女共同参画の道のりは、このCMの続きのシーンのようだ。男性と平等を求め、男性社会の価値観の中へ新規参入を狙っていた今までのフェミニズムは前者のタイプ。どうやら、それは違っていたようだと思い始めているのが今のフェミニズムの先端なのではないか?つよい、はやい、おおきいことに価値を見出す社会に加わるのではなく、よわい、SLOW(!)、ちいさい、ことの価値を認める社会へ、と。「勝つ」という未来の実現のために、「現在」を手段化するのをやめて、「今を生きる」ことを大切にしようと。あの女性は「歩くこと」を楽しんでいるのであってほしい、と思う。そして、男性たちも歩く楽しみに気づいてほしい、そういうゆとりのある環境を男性たちに、と思う。

 

「負けるが勝ち」って!?

 

 

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