ホーム » others » むかしむかし~映画の感想⑱

むかしむかし~映画の感想⑱

2002年ごろ書いていた映画の感想

*****

ロスト・イン・トランスレーション

/ 主演 スカーレット・ヨハンセン 2003年
/ アカデミー賞最優秀脚本賞受賞 4部門ノミネート(予告編はこちら) 
          
同じ日に見た2本の映画の主演が同じ女優さん、スカーレット・ヨハンセン。まったく趣の違う2本の主演作を見て、女優らしくない印象の弱い顔が彼女の売りかも知れないと思った。たとえば、ジュリア・ロバーツのような美女は顔の印象が強すぎて、役よりキャラクターの方が浮き出てしまいがち。観客もそれを承知で、ジュリア演じる役を見ているというように。

朝日新聞の「銀の森」がこの映画を取り上げていて、珍しく酷評。日本文化の中に溶け込めないでいるのは、異文化への旅の準備を怠った「外人」のほうにあり、疎外感の壁を作っているのはその外人本人たちだという視点が欠けているという評だったけど、でも、銀の森のほうが誤解かも、って思う。アメリカ人の傲慢さが鼻につく映画だとも言っていたが、見てみたらアメリカ人の滑稽さ、薄っぺらさもきちんと描いているし、だいたい映画の伝えたい部分はそこではないのではないかなぁ。

自分の居場所がないと感じている存在同士が、共通部分をお互いの中に見つける。共鳴する心、それをよく人は「愛」だの「恋」だのに勘違いしちゃう。けれどもここの二人は、簡単に恋なんかしなかった。居場所がないと感じている人は、寂しさを抱えて生きているんだけど、その寂しさを忘れるためにする恋愛ってのが、実は『いわゆる恋」の正体かも知れない。共鳴は「いわゆる恋」なんかではなくて、もっと根源的な一体感とか、同じ方向を見つめるもの同士の共感みたいなものじゃないだろうか?寂しさを解消するのではなく、寂しさを抱えたまま、それでも日々をあるがままに生きていこうとする勇気のようなものを感じる映画だった。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Scroll to Top