2002年ごろ書いていた映画の感想
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山の郵便配達
/ 主演 トン・ルゥジュン(滕汝駿) リィウ・イェ(劉燁)
(予告編はこちら)
仕事でほとんど家にいることのない父と、不在がちの父になじめない息子を描いていると言う点で今の日本の仕事人間の父親像と重なる部分が多く、「父」という立場について思いを至らせるのにうってつけの映画だと思う。
友達のある若い父親が、仕事が忙しすぎて子どもとかかわる時間が十分に取れず、いいわけともつかないが「子どもとかかわる時間は量ではなくて質」と言っていた。時間もままならない父親はそう思わずにはいられないというのが本当だろう。しかしどれほど「質」と言っても、なじむまでも行かないかかわりのための時間の量の少なさは、質だけでは補えきれない。補えきれないまま、父との微妙な距離感もそのままに子どもは大きくなっていく。そうやって大きくなった子が父の仕事のあとを継ぐことになったところから映画はスタートする。
父が仕事に従事している間、家族のことを忘れていたわけでもなく、父に愛されていなかったわけでもないと子どもが気がつくためには、父と子がこの映画のように向き合う時間が必要なのだろう。あるいは、実際に向き合うのではなく、父の視点で父自身の人生を振り返ることができたら・・・。つまり、父親という役目の負っているものを子どもが自身の中に取り込むことができたら、父という役目(家にいて家族とともに時間を過ごすことのできない立場)ゆえの家族を大切に思う気持ちを理解することができるのではないか。
同行する犬の名前が「次男坊」である理由を思うだでけでも、父の気持ちは痛いほど想像できる。そのような思いを持ちながら、しかし仕事のために家族と離れなければならず、そして家族から離れて暮らす心のうち・思いを口に出して表現することのできない「父」という存在の切なさに胸が痛む。ラストシーン、次男坊が父に挨拶をしてから息子の山行に同行していく姿、見送る父の姿は、何度見ても目が潤んできてしまう。