2002年に初めて日本女性会議というものに、市の男女共同参画関連ということで視察に行かせてもらった。昨日アップしたののほかに上野千鶴子さんと北原みのりさん(アダルトショップ代表)と石坂啓さん(漫画家)の鼎談が見つかったのでアップ。2時間の鼎談だから、長いよ~。会場で来てる時も歯に衣を着せない発言ばかりだったけど、文字にするとさらに際立つね。」グーグル検索で危ういサイト扱いされかねない。
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日本女性会議2002あおもり
2002.10.4.FRI~5.SAT
青森文化会館/ぱるるプラザ青森
テーマ
私は私を大切に思うのと
同じ重さであなたを大切に思う
大きなお世話か~フェミニズムを次の世代に手渡すために~
・・・日本女性会議2002あおもり 全体会Bプログラム
上野千鶴子:こんにちは、おはようございます。ようこそ、裏番組へ!どちらが表でどちらが裏番組かは判りませんが、青森文化会館 とこの「ぱるる」2つの会場で同時進行で行なわれております。体が引き裂かれる思いでいらっしゃると思いますけれども、それでもこちらを選んで下さった方々、本当にありがとうございます。ここにいる3人は共通点があります。どっちが裏番組でどっちが表かは最後は視聴率で勝負したいと思っておりますが、何しろむこうさんは、政府の関係者であるとか大新聞の記者であるとか様々な方がお揃いなんですが、ちょっと平均年齢がお高めであるようで、むこうが年長組、こちらは年少組でございます。もちろん、会場にはいろんな年齢の方がいらっしゃると思いますが、ここは”young at heart” 気分を若く行こうと思います。できるだけリラックスして楽しく過していただいて、終わったら「あ~、ここにきてよかったぁ」って思っていただきたいと思っております。
もうひとつここの3人の特徴は、私はなんだか国家公務員なんかになっちゃいましたけど、後の二人は漫画家とセックスグッツショップのオーナー、まぁようするに、フリーターに毛が生えたような方々たち、国民健康保健で生きている方たち(笑)。そういう意味で組織の後ろ盾もなければ看板もなく、身ひとつで身体を張って生きている方たちです。それともうひとつは、もともと石坂啓さんというのはどちらかというと割とエッチな漫画を描いておられた方です。北原みのりさんは知る人ぞ知る女性でセックスグッズマーケットを開拓したショップのオーナーであり、経営者であり、自らもいろんなアイデアを、持ってらっしゃる方です。私は、何を隠そう下ネタ学者と(笑)、別名4文字学者、おまんこ学者などと呼ばれて、ヒンシュクを買っている3人でございます。この3人の共通点は「ヒンシュク」という言葉でございまして(笑)、たぶん皆さんも各地でヒンシュクを買ってらっしゃると思いますが?というわけで、楽しく行きたいと思います。
そうですね年齢でいいますと、私が54歳です。ぶっちゃけて言いましょう、更年期も過ぎました「あがった女(・は強調する話し方、以下同じ)」です。石坂啓さんが46歳、なぜだかこの人だけ「夫・子持ち」です。北原さんが31歳、最年少。一応私どもは、フェミニズムの話をするにあたって、50代40代30代とそろえました。どうしてこの年代から上がないかと申しますと、申し訳ありませんがフェミニズムという言葉が日本で流通し始めまし々はご遠慮いただいたのです。
そうは申しましてもフェミニズムという言葉の歴史は大変古うございまして、一番最初に使われましたのは戦闘の中ですから大正時代にもう使われています。日本語に訳さなかった私どもに責任があるのでございますが、中国語ではちゃんと女性主義と訳されております。フェミニズムと申しますのは女性主義とか女性解放思想とか約されたのですが、フェミニズムという舌をかみそうな言葉ですので日本語にしたいのですが、日本語にしましょう。ここでは「フェミ」ということにします。これ以降「フェミ」といったらフェミニズムのことだとお考えください。
それから、表番組というか青森文化会館というお名前からして格調高いところで行なわれているのは、人数も5人もいらっしゃるんですね。ここは3人で、多勢に無勢、50代40代30代一通りそろえましたが、あと一人ここにご登場願いたい人を用意しました。それは誰かと申しますと…。フェミニズムの前には日本ではウーマンリブというものがございました。私はリブよりちょっと遅れてきた世代です。日本のフェミニズムを語るときウーマンリブを避けて通ることはできません。リブというと皆さんはどんな感想をお持ちでしょうか。リブ世代の方がここに一人いらっしゃると話はもっとおもしろくなるのでしょうが、なぜだか今日はお呼びいただいておりません。で、架空のキャラを用意いたしました。(かぶりものをつけながら)ミスウーマンリブ、ミズリブ(写真参照)に私がなる時にこれをかぶります(笑)。合計4人で進めたいと思います。ところで、このかぶりものは北原さん手づくり?これなんですか?
北原みのり:まんこドールです(爆笑)。
上野:昨日のワークショップで使われた?
北原:それをかぶるとまんこの気持ちになる。
上野:はぁ、はぁ。まんこドールというものでございまして、ここが(かぶりものの毛をつまみながら)何かと申しますと、まんげ毛、茶パツのまん毛です。茶パツの人とお風呂に入るとおもしろいですね。髪の毛茶パツでもまん毛は黒い。(笑)それはそれとして、これはふさふさとしたまん毛でございまして、猛々しい。ミズリブだったら「フェミってなあに?」って言うだろうかって考えたんです。
ミズリブ(上野・以下同じ):フェミ?フェミってなぁに?私はリブよ。リブはリブよ。フェミなんてさぁ、あたしたちがさんざんぱらいろんなこと言った後で、75年の国連女性差別撤廃条約 とかってのがでてきて、フェミが国策になってからでてきた学者とか主婦の人たちのことでしょ。
上野:っておっしゃるかも知れません。ミズリブは特定のモデルはございませんので、架空の人物でございます。というわけで始めたいと思います(拍手)。さっき紹介してくださいましたけど、ちょっとお二人に何をしているのかを簡単に自己紹介してください。
石坂:こんにちは。漫画家です。石坂啓というのはペンネームでして、本名は啓子というんですけど、マンガを描き始めた時にあんまり男とか女とか先入観をもたれたくなかったので、ペンネームをこうしました。だから、よく男性と間違われます。デビューしたころ雑誌に写真を出しましたら、他の漫画家の先生たちに「あ、やっぱり男だったんですか」って言われまして(笑)ちょっとムッとしたことがあります。今日は青森で上品に行こうと思ったんですが、なんだかお二人にはさまれてると、おとなしくはできないかなと…。それでなくても私すごく体がでかくて、声もでかくてどうも態度もでかく見えるらしいんです。自分では謙虚にしてるつもりなんですが…。漫画家同志の飲み会があって、隣にいた女の子が他の人とケンカをしてテーブルをひっくり返しちゃって大惨事を起こしたことがあったんです。ところが翌日他の編集者にあったら「石坂さん、暴れたんですって?」って言われちゃって…。私はテーブルとか片付けてたほうなのに…!いろいろと損することが多いです。でも、このお二人の間ではちょっと控えめに見えるかもしれません(個人的に笑)。青森の方に媚びて帰ろうと思っています。よろしくお付き合いください。
上野:北原さんのお仕事を説明するのはちょっと難しいんですね。どうです?ご自分で。
北原:はい、私は今「ラブピースクラブ」という女性向のセックスグッズショップを経営しています。一応厚生年金で暮らしているんですけれど(笑)。平たくいうと大人のおもちゃ屋をやっています、96年から。こういうことをやろうと思ったのは、インターネットのホームページの制作会社をお友達と経営していたんですが、そのころインターネットというのはポルノグラフィばっかりだったんですが、アメリカのを見てみたら、女性向のポルノグラフィのサイトはとてもきれいでかっこよかったんです。それと、女性が作ったセック
スグッズ、今までのバイブのイメージを変えるようなものが売られていて、日本のバイブって…。(間)こんな話最初からしちゃっていいんですか?
上野:北原さん、ちょっとあんまり横文字とかカタカナ言葉使わないほうがいいんです。バイブってなんですかぁ?(わざとらしく)
北原:バイブはですね、日本語でなんていうんでしょう?マッサージャーのような…。肩こり機のまんこにあてるもの。
上野:バイブレーターの略。昔の大和言葉で「張り型」と申しました(笑)。
北原:張り型は動かないんですけど、張り型の進化形がバイブです。
上野:ハイテク商品ですね。こちらの方はバイブレーターを販売してます。今日は商品見本はお持ちじゃないの?
北原:楽屋にはありますけど。
上野:あぁ、そうですか。実物見せてもらったらよかったんですけど。ところで、もうかってまっか?
北原:一応会社にしておりますので、利益を出そうと努力はしています。女性向のということで男性向けマーケットをつくっているのではないので、初めて女性がバイブを買うモチベーションを創っていくところからやってきたと思っています。今は一日に20万件くらいヒットするまでのホームページになりまして、お店に実際来る方は少ないですが、地方の方や海外の方も反応して下さっています。勉強会などもしていて、セックスについて自分の言葉で語るというようなワークショップもやっています。
上野:ありがとうございました。今日は放送禁止用語が何回もでるかもしれません。でも、どうぞ私たちを責めないでください。この3人をここに組み合わせたのは実行委員会の方々です(爆笑)。何か問題がありましたら、実行委員長の方におっしゃってください(爆笑)。ここは普通のシンポジウムみたいに「フェミニズムを次の世代に手渡すためにどうしたらよいかを、それぞれ15分ずつお話ください」なんて、ダッセーことはやりません(笑)。私、合計10問の質問を用意いたしました。それをパキパキと行きますので、一問1分から2分くらいで流していこうと思っています。
今、フェミというのは全国的にバッシングを受けている、というのは皆さん肌で感じておられるかも知れません。このパネルの一番最初にいただいたタイトルは「なぜ、フェミは嫌われる 」というものでした。ま、嫌われるというよりも、余計なお世話かというような、前向きなタイトルにしようということにしたのです。まずフェミニズムと聞いたら何を連想しますか?というところから入ろうかなと思います。(会場に向かって)どうぞこのお二人と一緒にご自分ならどうだろうと想像しながらお答えを聞いていてください。では、ミズリブさん?
ミズリブ:フェミ?フェミニズムってリブじゃないわよ。フェミってこんなんでしょう?お尻さわられたらさぁ、「(ばしっと)なにすんのよっ!」って手が出るのがリブで、「(なよなよと)あらぁ、これってセクハラじゃないかしら」っていうんでしょ?
上野:実際ほんとにこう言った方いらっしゃいます。田中美津 さんです。性格の悪い人です(個人的に笑)。じゃ、フェミって聞いてなにを連想する?
石坂:フェミって、実はフェミで区切ったのは今日ここで初めて聞きました。フェミニズムと聞くと私は上野さんの顔を思い浮かべます(笑)。フェミって聞くとシャンプーを連想しますね。あの、刷り込まれていたと思いますが、振り向いた時のかわいらしい女の子のイメージで流れていたCMで聞いた単語だなぁって。
北原:私は、ちょっとしたやくざなイメージで、上野さんの顔がかぶりますね。上野さんの言葉でフェミニズムがいろんなところへなぐりこみをかけてきたんだってのが、すごく印象に残っていて。
上野:こんな答えが出るとは予測してませんでした。「(自己紹介のように)歩くフェミニズム」です(笑)。私の周囲には上野がフェミニズムを唱えたばっかりに、フェミの評判を落としたとおっしゃる方がいるので、まぁ、そうかも知れません。罪なことをしたと思います。ところで、じゃ、あなたはどうなの?って聞かれたときに、あなたは自称フェミニスト?あなたはどうなのって人から聞かれたときに、どう答えますか?ミズリブに登場いただきます。
ミズリブ:(はすっぱな話し方)アタシぃ?アタシはリブよ 、リブはリブよ。リブってのはね、生まれた時からリブなの!リブって生き方の問題なの。だから、フェミニストのように、「…になった」り「…でなくなった」りなんてことはないのよ。
上野:って言いそうですね。あなたは自称フェミニスト?もうひとつ続きを言いましょう。リブの時代にこういうことがありました。これ(まんこドール)ってたまたまピンクですが、多くの方がリブと聞いて連想するのはたぶん田中美津さんの顔よりもピンクヘルメット でしょうね。ピンクヘルメットの時にいろんな方がこういうことをおっしゃいました。「私はリブではありません。But…」ですね。「私はリブではありません。が、でも、女性の地位向上はしたほうがいいと思います。」というように煙幕を張ってものをおっしゃった。同じように、段々フェミも評判が悪くなりまして、「私はフェミじゃありません、でも男女共同参画は進めた方がいいですね」っておっしゃるわけです。どうもリブも評判悪いし、フェミも評判悪いですが、あなたはフェミニスト?って聞かれたら、石坂さんならどう答えるの?
石坂:私は軟弱ですけれども、自称フェミニストと言いたいです。内容が伴っているわけではないのですが。私は男向けの漫画雑誌で仕事をしてます。どうして男性誌で描いていたかというと、20年位前にデビューしましたが、そのころの男向けのマンガに描かれている女の子のキャラにすごく不満があったんです。自分も若かったですから、「ちょっと待てぃ!」って言いたくなるくらい。そういうことを自覚せざるを得なかった。マンガってのは人気がなくなると即仕事がなくなりますから、いくらか媚びながら描きますが、それにしても男の子に人気のあるのはどういうキャラかというと、かわいい女ですね。それから身体がいい。おっぱい絶対でかいんです。それから賢いんだけど、あんまり賢すぎちゃいけないんです。あんまり賢い女の子は男の読者に反発を買う。それから、男の子とHをするとですね、Hの内容はともかく「いやぁん」とか言ってても必ずHが終わると「よかった」っていうせりふを言ってる。それにちょっと待ったって気持ちでこういう雑誌の中にもぐりこんできていました。女のほうからのものの言い方というのを意識していましたから、そういう意味ではフェミニストと言えるかなと思います。
上野:石坂さんみたいな人に、男向けの漫画媒体がよく漫画描かせてくれましたね。どうやってもぐりこんだの。
石坂:編集者と酒を飲んでですね、仕事をもらったり…。(笑)嘘!嘘!。私は手塚治虫さんが好きで、最初から少女漫画を描いていませんでしたので、男性誌であえて描きたいと思ってもぐりこむようにしていました。
上野:媒体にもぐりこんだけど、でも残念ながら爆発的には売れてないんですよね。あの「めぞん一刻」 の方のようには(個人的に笑)。じゃ、北原さん、いかがでしょう、30代。
北原:30代代表じゃないんですけど。自称フェミニストって言われたらというか、「フェミニストじゃないよね?」って言われたら「フェミニストです」って言うようにはしているし、やっぱりフェミフェミ怒ったり泣いたりしてるのでやっぱりフェミニストなんだなって思うんですよ。フェミニストって現代の最先端を行っていてかっこいいというイメージを持ってる方がいらっしゃるとしたら、私はアカデミックな現場にいないし、むしろ気分的にはリブのほうなのかなとも思います。
上野:なるほどね、フェミじゃなくてリブという選択肢もあるかもしれません。でも「フェミニストじゃないでしょう?」ってどうして言われるんです?
北原:それは「(さぐる感じ)フェミニストじゃないよね?」って、カムアウトする前に。カムアウトするしないってのがあって。
上野:あぁ、向こうが警戒してるって感じ?私もね、学生さんが寄ってきて「先生、先生フェミニストとちゃうやろ(大阪弁)?」って言われるんです。「えぇ~!?」とか言うと「他のフェミニストの先生と違いすぎるもん」って(笑)。自称フェミと名乗った時の回りの反
応ってどうです?名乗ったとたんむこうの腰が引けるとか。
石坂:引きますね。「あぁ、はいはい」って感じで言われますね。それはどうしてかな?あまり検証したことがないんです。今日のタイトルにもありますが、いくらかそういう輪郭をもたれているんでしょう、恐そうなとか、うるさそうなとか、これは相手にすると面倒だなというのがあるかもしれない。
上野:それは営業上マイナスですか?
石坂:マイナスではないです。マンガの場合はマンガで見てもらう。だからそのマンガの中に描かれていることで相手に引かれるとこれは完全にマイナスですが、読んでもらえるかどうか、その前に漫画家はどうか。漫画家って性格の悪い奴が多いんです。あんまりいい奴いないんです。雑誌の方も、編集の方も最初から用心してかかっている。変な奴と付き合わなくてはいけないという用意がありますから、その意味では営業として人格的な要素はあまり関係がない。
上野:フェミニストにもあんまり性格のいい人がいないように思うんですが。北原さん営業上どうですか?
北原:「今フェミニストです!」って営業してるので、フェミニストは商品だと思っています。
上野:フェミで商売してる?すばらしい、とうとうこういう世代が現れた、フェミマーケット。
北原:そうです、セックス産業に入っていくときに、フェミ産業から入っていったほうが入りやすいんじゃないかと思ったのであえてフェミニストですって。
上野:私は80年代のフェミニズムの商業主義化のA級戦犯といわれてるんです(笑)。でもね、商業主義化ってどうせなら村上春樹ぐらい売れてから売れたっていってくれよって、100万も売れたことないんで。ですから、フェミ業界といっても細々としたもんです。ところでお二人に聞きたいんですが、どうも若い人にフェミって評判よくなさそうなんですが、おふたりはそんな中でどうしてフェミニストと自称するようになったんですか?「人は如何にしてフェミニストになるか!」?
石坂:持ち上げるわけではないんですが、私は上の世代でかっこいい人たちを見てそちら方面について行きたいと思うことがたくさんありました。千鶴子さんにお会いしたのもそうです。私はマンガ雑誌の中では全然売れない、マイナーだけれども、例えば戦争の話を描こう、女性のことを描こうとか思ったときに、先人の描かれた物をみたりして、やはり時代を引っ張って行く人ってかっこいい。大方の人は、時代が進化していくときに乗っかっていく。そうやってどこか進化します、それぞれが。だいたい時代の流れってそうやってすすむ。時代の流れの足を引っ張っている人ってあんまり好きじゃない。時代を持ち上げ引っ張って一番を走っている人はかっこいい。そのかわり、一番を走っている人は時代にあんまりはやすぎて、あんまりいい目にあってなかったりする。討ち死にしてたりするんです。辻本清美 とか(会場は笑)、上野さんも売れてないだろうなとか。そういう人たちの後について行きたいなと言うのがあるので、一番を走る根性がないのですが、気持ちは引き継ぎたいというところです。
上野:相当気配りしてない?(笑)。北原さんの世代でフェミニストって珍しいと思うんですけど、どうしてそうなったんですか。
北原:大きな理由とかないんですけど、子どもから大人になる時に自分の身体とセックスに対してどうしても言葉で表現できないことがあって、自分は意識してないけど、痴漢にあったり、いきなり性的な対象にされたりとか。そういうときに自分の中にもやもやしたものがたまってしまって、それをどう発言するかを考えてきた。高校生の時にジェンダーという言葉に出会って、「あ、これだ」って発見があった。私はリブの世代の空気も知らないし、初めからアカデミズムでの勉強フェミでジェンダーという言葉がぴったりきた、ここだって入っていったような気がします。
上野:お勉強フェミが役に立ったという証拠を初めて見ました。
ミズリブ:あたしは、リブよ。リブって生き方だから、「に、なった」り「に、ならなくなったり」するもんじゃないの。
上野:リブの方はそうおっしゃいますが、私、今「フェミになる」って聞きましたが、ちょっと誤解される言い方をしたかなと反省してます。「人は如何にフェミニストになる」はね、人は自分の中に抱えているもやもやがいろいろあった時、それに言葉を与えてくれるものが登場した時に「あぁ、私が前から感じていた、考えていたことはこれだったんだ」って出会いが出てくるだけなんだと。だから最初から感覚とか生き方とかが内側にある人がほとんどだと思います。私フェミニズムは70年代から日本で流通した言葉だと申しあげましたが、この会場にいる人たち、70代でも80代でも90代でも「私はずっとそう考えてたのよ、それをフェミニズムって最近の言葉で言うの」ってそれだけのことなんだと思います。でもって、そうすると私はあなた方の世代を見ると思うのですが、私たちはフェミニズムに言葉を与えるということをやってきました。女性学ってのをやってきたのですけど、そういうのをちょっとかっこよく言うと「私の前に道はなく、私の後に道はできる」って言うんですけど、という女性学のパイオニアの世代です。パイオニアの世代というのは苦労もしましたが、好き放題でもあったんですね、何をやっても誰からも何も言われない。30代40代の方たちは目の前に誰かがいて、歩くフェミとかお勉強フェミとかがあって、なんかお勉強フェミとか、人の言葉を学んで、「(気づくみたいに)あ、ジェンダーなの。あ、フェミなの。」って何かを自分の中に身につけていくときの、プラスもあるけどマイナスもあると思うんです。「やだなぁ、こういうことをこういう風に言われたくないなぁ」って。上の世代からこういう事を押し付けられたくないってのもあるんです。私は石坂さんの先ほどの気配り発言を聞いて、「あ~、この人も大人になったなぁ」って思いましたけど(笑。)ちょっと率直なところ上の世代のフェミを見ていてどう思う?
石坂:気配り抜きで言いますと、好き放題やってくれたおかげで、その反動が私たちの世代にあったかもしれない。上の人たちが痛い目にあっているのを見て、じゃもう少し上手に立ち回ろうとか、その反動でまた保守にいっている女性も多い世代だと思います。
上野:反動って具体的にどういう形を取るの?
石坂:例えば林真理子さんとか(個人的に笑)。これ、オンエアーされてませんか?(笑)。どうやって言ったらいいでしょうか、男性にかわいく見えたい、男性にあまり逆らわない、男性に媚びる、ひどいいい方してますね。林さんということでは…一般論的、一般論で言ってるわけではないんですけど。そういう揺り返しはあったろうなと思います。痛い目にあった人たちと同じ轍を踏まないというところでちょっと引っ込んじゃったかも知れない。
上野:なるほどね、でそのうまく立ち回っていらっしゃる方たちは、ちゃんとそれに成功していらっしゃる?オヤジ社会からうまい汁を吸っていらっしゃる?
石坂:ちょっと自分で描いた漫画の話をします。私、女の子が男社会でいい目をみて自分がおいしい思いをして、それで好き放題やって何が悪いというようなストーリーを書いたことがあります。自分としては上手に男を手玉にとって自分だけが楽をして儲けるというやり方をしてる。しかし気づいてみると一番儲けていたのは男の側ではないか、というところに最終的に持っていく話を描いたことがあった。私の考えでは傍目にとても楽そうでいいとこ取りに見えますが、対等にちゃんとした市民権を得ているわけではないと、得はしていないと思います。
上野:得はしてないと思うのはあなたが第三者で、ご本人はどう思ってらっしゃるかわかんないじゃない?ご本人はいつか石坂さんがおっしゃったようなことに気がつくことがあるの?
石坂:マンガを描いていた後、私自身に子どもが生まれたりして、子ども中心で生活せざるを得ない時があって、やっぱり楽な生活ってずっとは続かない。具体的にはやっぱりどこかでぶち当たるなぁという気がするんです。現実的に自分が困難になると感じる時はあると思います。だから、私は人生は公平にできてると考えたいです。だって悔しいですよ、だってそんな楽していいとこ取りの人生を送る人たちがいっぱいいるとすると「ちょっと待った」ってまた言いたくなりますから、それが本音ですね。
上野:本音が出ましたね、これをなんというか。今に見ていろ路線(笑)。でも、最後に今に見ていろが来なかったりしてね。今の若い子たちの、ロールモデルが栗原ひろみ さん。女の人はずいぶん変わりました。女はずいぶん変わったけど男社会が変わらないもんだから、それだったらできるだけ労を少なく、コストパフォーマンスのいい生き方をしようというように若い女の人たちが思っても不思議はないと思います。うまくいけば、家庭と夫を大事にして世間的にもサクセスできるという栗原ひろみというロールモデルがもうひとつ林真理子さんの向こう側にいらっしゃる。この方もそのうち今に見ていろになるのかしら?じゃ、北原さん、どう?
北原:上の世代って、上野先生の世代のことじゃないですよね?(笑)30代後半とか40代のフェミニズムの人たちって頭に浮かばなくて、やっぱり上野さんの世代になってしまうかな。出会えた形というかフェミニズム業界の中を見ていくと、やっぱり50代の方が多くて、食いもん違うと思うくらい元気な方が多い。(笑)で、なんだろう私に「若いからがんばりなさいっ」とか「あんたすごいわね、セックスグッズ?」とか、「自分はセクシャリティなんかもうどうでもいいんだけど、あんた頑張ってね」って。私はもっと上の世代の方に頑張ってもらいたくて、それでいいとこ取りしたいって思っているので、もっといろんなこと頑張ってやってくださいって気がするので「(ぶりっこ口調で)応援してま~す」って(個人的に大爆笑)。
上野:今日は相当気配り発言が多そうな気がします。でも、お勉強フェミしてた時はどうでした?お勉強の中にもちろん共感もあったでしょうか、違和感もあったと思うのですが。両方あって当然と思いますが。
北原:私たちの時は女性学が大学で学べる時代ではなかったので、ほんと趣味のフェミニズムですよね。今ほんとうらやましい、20代の人たちが「私セクシャリティ勉強してます」って方、いっぱいいるじゃないですか。でも、話を聞いてると、アカデミズムの中で自分の言葉で喋らないから、勉強してても自分の生活がどうなってるかというと、大学の先生にお茶を出したりとかかわいらしい女を演じたりとか。そんな中で引き裂かれる思いがあるというのを聞きます。私自身はそういったところで戦ってなかったので、とても強い違和感をもって生きてきたわけじゃない。
上野:なるほどね、今の北原さんの発言の中で「フェミは趣味ですから」ってこれは言いえて妙ですね。私たちの世代は実はそうでした。フェミは趣味。この趣味で飯が食えるなんて夢にも思っていなかった。ところがやっぱり私若い人見てて思うんです。フェミが趣味でなくなった人たちが、業界ができたために、出てきたのね。その女性の方たちが超高学歴化してる。大学院というところに入院しておられる(笑)。大学院にすすむことを私たち入院というのですが、入院期間が長期化すると社会復帰が困難になる(爆笑)。困難になるとリハビリが必要になる。こういう方たちを大量に生産するのが女性学が大学で市民権を得た効果なのかなと思うと「う~ん」とか思っちゃったりする。というわけで、私若い世代の女を見てるとむかむかすること結構あるんです。で、どうですかね、石坂さん。30代女見ていて、さっき上の世代のことを話してもらいましたが、今度は下の世代を見て、この人たちいったいどうなってんのって思ったときないですか?
石坂:今30代40代の方との付き合いがすっぽ向けてるところがあるので…。上の世代に対してあんまり腹が立つことはありませんし、また、逆にあんまり若い世代向けにマンガを描くこともないから、それもないですね。もうひとつ下の若い世代と付き合っているんですが、うちの子どもは小学6年生。私の住んでいるところは東京といっても下町の雰囲気のあるところで、いつも子どもが出入りしてるんです。朝うちの子を迎えにきて一緒に納豆ご飯を食べて学校いくとか、近所にたまたま仕事をしている親が多いので、うちで夕飯食べていったり風呂入っていったり、男の子も女の子も間近に見ていたので、そこらへんの女の子はおもしろいなと思って、厭きずに見ています。大体子どもはそうですが、女の子の方がはるかに大人で、女の子は騙せないなと思います。男の子は騙せますね。男ってやっぱり、おろかかも知れない(笑)。そこらへんの10歳~12歳の女の子は、あれもやりたいこれもやりたいなんて言ってるところは悪くない。間の世代をこえてその子達と付き合えるかなって思います。女の子とこの間話してたのは、「下ネタって、今までできの悪いギャグのことだと思ってました」って(笑)。全然違うって、いろいろ教えてあげることたくさんあるって(笑)。
上野:お母さんの世代よりは一つ下の今の中学生くらいの方に希望を持っておられるのね.でも、どうでしょうね、小学生くらいまでは男の子と女の子が取っ組み合いのけんかをしても、女の子が勝っちゃったりするんですが、今の50代60代のかただって小学生のころは元気いっぱいだったかも知れないじゃないですか。そのまますんなりその元気のまんま育ちますかね?
石坂:私はいくつか芽を残したいと思っています。逆によいしょと持ち上げて、育てたいなと思っています。現実どうでしょうね、来年くらいは一緒に遊んでくれなくなるでしょうか、男の子と女の子まったく分かれちゃうかも知れないし。今のところ、可能性としてやっぱり才能の塊を見ているわけですから、ちょっと育てたい気にはなりますよね。
上野:11歳って微妙な年ですね。私の敬愛する友人、小倉千加子 さんという方が「セクシュアリティの心理学 」と言う本で「思春期とは」というほんとに卓抜な目からうろこの定義をしておられるんです。「思春期とは女の子が自分の肉体が男の欲望の対象になり、男の目線で値踏みをされると言うことを自覚するようになる年齢のこと、生理年齢に関係ない」ですから、3歳で自覚したら3歳でその子の思春期は始まるの。15歳で遅れた思春期を迎える子もいる。11歳ってきわどい、微妙なころね。この子たちがこのあと、オヤジ社会から甘い汁を吸って寄生して生きようと思うか、それとも思わないか、どうなんでしょうねぇ。
石坂:もう思ってると思いますよ。「年取る前に早くお金持ちの彼つくりたぁぃ」なんて言ってますから、もう侵されているところあるかも知れない。
上野:現実わかってないのは、もうお金持ちの彼はどこにもいないってこと(笑)。
北原:上野さんがおっしゃる若い世代ってどんなあたりかわかんないんですけど。
上野:30代なんです。
北原:…(笑)
上野:その方々って、「Hanako 」って雑誌が出たときに20代を過して、新人類って言われてバブル の時代にぬくぬくと就職して、そんでもってなんだか知らないけど、表参道にルイ・ヴィトンができると500m行列 作っちゃうって人(笑)。
北原:でも、あの列つくってたのはヤンキーとオヤジばっかりでしたよ。(笑)でも、私その世代からずれてて…。怒りの対象からは外れてるんですけど、私にとって若い世代って言うのは10代20代後半なんです。先日新潟で講演した時に、マイク使わなかったので「このくらいの声で大丈夫ですか」って会場に聞いたら、後ろのほうから「ハイハイハイッ」って19ぐらいの女の子が手を挙げて「フェミニズムってなんですか?私ね、学校の先生にここ行けって言われたから来たんだけどぉ。わかんないんだけどぉ。」って。その場を支配してる空気と言うのが行政の、講演の主催は行政ではないんですが、年代の高い人たちの会で、その中で彼女は自分の言葉で話していて、私は「まだ講演始まったばかりで話すわけには行かないんで、ともかく講演聞いてください」って進めたんです。1時間半講演をして最後に質問を受けたら、彼女が真っ先に手を上げて「よかったよ(どすのきいた感じ)、一緒だよ(ヤンキーラップ系の手振り)、かっこいいよ」(爆笑)。19歳で学校の先生と一緒にきてるのに「私も大人のおもちゃ屋やりたいって思ったんだけど、難しそうだね」。ほんとにそんな具合に、大人に囲まれたその場の空気とかに左右されず、19歳の自分の言葉で語れる彼女ってすごいフェミ魂だわって感動した。
上野:そういうところで19の女の子に「フェミニズムってなんですか」って聞かれたらさ、北原さんならなんて答えるの?
北原:答えられなかったんですよ。自分にとってのフェミニズムというのは女として生きにくさを感じる時に、見つけた言葉はすべてフェミニズムだったんだと感じたんですが、定義はできなかったので、「話を聞いて感じて」って言ったんです。
上野:かっこいいって言ってもらえたのね。今日10代来てる?(少数だが手が挙がる)あ、は、ありがとう!おばさんがたに混じって勇気あるわね(笑)。20代いる?(同じくらい手が挙がる)あ、ありがとう、でも少ないねぇ。こういうテーマでやってもやっぱり若い人来てもらえないのね。フェミニズムは、訳語がいくつかあるんです。女性主義・女権拡張論・女性解放思想ってのもある。訳語が違うと意味が違うので、私はフェミニズムがそれまで行なわれてきたいろんな女性の社会運動と一番違うのは、他人を救ってあげようとか自分よりも弱い人たちを助けようとかするのではなくて、私が救われる、私が自分で自分を解放したいということだと思うのよ。それで、私にとって何が解放かということは、誰にも教えてもらえないじゃない?私にしかわかんないじゃない。私が何が気持ちがいいか、私が何者であるかと言うことは私以外の誰にも決められたくないよって言う考えかたってどうだろう。具体的に言うと、私「あがった女」です。あがった女と言うと普通ね、女の定年と言われるんです。ちょっと定年早く迎える人もいるんですね、子宮筋腫とかのいろんな手術とかでね。「おまえはもう女じゃなくなった」なんて亭主に言われたりなんかするんですけど、私はいつもこう思うんです。「おっぱいがあろうがなかろうが、子宮があろうがなかろうがブスだろうがなんだろうが、あたしは女です。女がどういう生き物かは、(ドスをきかせて)あんたに決められたくはねえよ」(拍手)。でね、子宮がなくなっちゃったあがった女は「おばん」です。「おばん」が生き延びていることは文明の悪だとおっしゃっていたのが石原新太郎都知事 。私はこの人に都民税収めて悔しくてなりません(爆笑)。
で、「10代はいい」って話なんですが、おもしろい調査がありまして、NHKが日本人のSEX調査を3000ぐらいのデータを取ってやってます。そこでデータを克明に読み、解釈しながら宮代真司さんという社会学界の札付き男と(個人的に笑)フェミ業界の札付き女の私が対談したんです。本になっています。NHKブックスの「日本人の性行動性意識調査 」と言う地味な本なんですがこれを読むとおもしろいことが判ったんです。30代女というのが日本では歴史の分岐点にいるというのがわかった。何かと言うと、30代女は、頭の中は旧世代のモラルで縛られながら行動は変わってしまっていて、頭と身体が引き裂かれているので股裂き状態にいるかわいそうな人たち(笑)。20代から10代はもう頭の中もやってることも変わってしまっている人たち、この人たちは結構のびのび生き生き。もはや処女なんて関係ない、男の子と付き合うならSEXがあって当然、童貞処女の結婚なんかありえないと思っている人たちで、思っていることを実行している人たちなんです。ところが今の10代20代のおっかさんの世代は40代ですから、40代は頭の中は昔のまんまで、身体もそれに縛られていて、不倫したいと思っているんだけど、思っていながら一歩踏み出せずにがんじがらめになっている人たちだということがデータでわかるんです。私は違うっていう人がいるかも知れませんが、それは統計上の例外です(笑)。統計の全体をみるとそういうことがわかってきて、どうやら30代の女は股裂き状態を生きている。10代20代は別なほうに行きつつあるが、そのかわり母親世代とのものすごく大きなジェネレーションギャップがあってここでは異文化衝突が起こる。40代の母親にとって10代の娘はわからない。もちろん石坂啓さんのような方は例外ですよ。と、いうことが判っているんですけど、30代とか見ててどう思います?
北原:あたしはSEX産業にいるので、30代後半の方を見てると「ジョアンナの愛し方 」を大学生の時に読んで、今「SATISFACTION 」を今読んでる世代だと思うんですよ。
上野:解説して。
北原:「ジョアンナの愛しかた」は‘91年に出た本で、男性を如何に悦ばせるかを描いた本です。ほんとに睾丸の舐め方からペニスの舐め方までほんとに細かく指導して…
上野:ハウツー本ですね。
北原:そうです、それはとってもその時代売れた本で、「SATISFACTION」が35万部出ていて出版界をにぎわしているんですが、これは正しい愛のためのハウツー本、今度は男性に如何にクリトリスをうまく舐めさせるかを。ま、調教の本ですけど。というのもかなり売れてるわけですよ。そうすると頭の中で私たちはSEX楽しめる、女も欲望を言っていかなくちゃ、コミュニケーションしなくちゃ、男とつながってなくちゃ、いいSEXしてなくちゃ、と言いながら実際は違うからそういう本を買う。自分のいい女をそういうことでSTEUPという意識に燃えられないような、うざったい世代という風に思ってるんです。
上野:でも、すごいですね。こういう会場でついにマイクを手に持って「クリトリスを舐めさせる」と(爆笑)。青森はすごいところです。こういう発言をするとこの会場の中にもいろんな方がいらっしゃって。「(しみじみと)あぁ、そういうことを私は夫に一生涯に一度もしてもらったことがない」と思う方もいらっしゃるんじゃ…?(会場静まる)。あるいは、いまさら調教なんてとてもできないわと(笑)とかね。私もほんとに下ネタ専門でございますので、SEX調査いっぱいいっぱいやっているんですが、こういうことがわかっています。日本の70代以上の女の方にとってはSEXは「あのつらいおつとめ」で「一刻も早くやりすごしたい経験」(会場静まる)、だったと言うことがわかってます。50代60代の方にとっても実は性的な快楽とは何かを一度も味わったことがないもの。渡辺淳一 を読むと失神するらしいが、死ぬまでに一度は味わってみたい、でも今の夫にはとても望めない…(笑)というかたがいらっしゃると言うことが判っております。そういう方にはどういう風に申しあげたらいいんでしょうか?
北原:バイブを買ってください(爆笑)、サービスでローションつけて差し上げます。
上野:そうね、バイブって男みたいに気を使わなくていいものね。なるほど、実践的なアドバイス(笑)石坂さんどう?笑ってる場合じゃないわよ。
石坂:30代が引き裂かれているというのは、あそうか、私が今12歳と仲良くやれてるのは向こう側に行っちゃっているからかもしれないと。私は統計の中では出てないんだろうなと思いました。私が青年誌でマンガを描きはじめたころは、ようやく女の子が「こういうSEXはいやだ」とか「こういう男と寝たい」とかを言い出せるようになったころなんです。そのときにそうことを言える女たちがぽつぽつでてきたなって。今、女性の例で世代別の傾向が判りましたけれども、男の子に置き換えても判りやすいんです。今の若い男の子と言うのは最初から、ゴミを出したり、スパゲティを作ったりそれくらいやってないとモテナイと言うのをもう心得ている。
上野:今ドキッとしたでしょう息子さん持ってるお母さん方。それでも避妊してくれって言い出せなくて妊娠しちゃったって子結構いるみたいなんですけど。
石坂:自分としては仕事や付き合いであったりとても気にかけていて、いい方向に持っていきたいと思っているんですが、とりあえずできる範囲のところでは、やれることはやっていこうと思っています。本当は家で「Hしてもいいけど、避妊はするように」というのは言ってたと思います。今学校で性教育を一生懸命取り組んで下さっているみたいなんですが、すずめの受精はどういうのでしょうとか描いてあるんですね。教科書に。判りますか?すずめの受精、答えは体内受精なんですが。
上野:すずめもチンチンあるんですか?
石坂:知らないです。すずめの雄雌の絵が描いてあるんですが、わかんないんですよ、同じようにしか見えない(笑)、私が先生に教えて欲しいくらい。要するに私たちは言葉をもっていなかったというのがすごく実感なんです。自分たちの身体のことを話すときに恥ずかしげに「あそこ」としか言えなかったんですよ。何でそんなに卑下する必要があるんだということ。例えば自分が妊娠した時、ほんとに痛感したんですが、自分の身体のデリケートなところ、いろんなところを主治医と話をしたい、人に確認したい時に言葉を使えない。恥ずかしくて。何でいちいち「恥ずかしい」という字とかですね、「陰」というかげと言う重苦しい字が性器にはついているんですか。恥毛とか陰核とかですね。もっと等身大の手垢のついてない言葉が本当に欲しかった。普通「ひじのこの辺がさ」というのと同じように、それ以上でもそれ以下でもない言葉がない。例えばコンドームという言葉は私はエイズ問題があった時の、少ない功績のひとつだと思うんです。コンドームという言葉を恥ずかしくなく口に出すことができるようになった。上野さん、若いころはコンドームをなんて呼びましたか?
上野:突撃一番(爆笑)、それは軍隊用語です。
石坂:(笑いながら)私そんなの、高校生のころ、歴史の本でしか知りません。「あれ」とか「ゴム」とか「サック」とか、今思うとこっぱずかしいのは「むんどーこ」と言うのまであった(笑)。言うほうが余計恥ずかしいと思うじゃないですか。コンドームという言葉を獲得できなかった。妊娠した時に女性が自分の身体を語るとき、こんなに不自由なのかと。もちろん妊娠する以前に男性と付き合っているとき自分の身体を語る言葉がないなぁと言うのがあった。できるだけ私は自分の子どもたちには、自分の子どもは一人ですがいつも友達とかたむろしているので、子どもたちにはそんなに大人のフィルターのかかっていない普通に使ってかまわないと何でも喋るんです。そうするとむこうも喋ってきますから、ビックリします。「パパとママって交尾したんだよね」とか(笑)。「(平然と)しましたよ」なんて返事してね。「やりまくった?」なんて突っ込んでくる。そういうこともあんまり顔色変えないでいるんですが。
上野:りっぱなご家庭(笑)。
石坂:現実的には手の届くところからちょっとづつ改善したいなと思っている。
上野:話が下ネタよりになっていると思われるかも知れませんが、私はこれはとっても大事なことだと思うんです。ベッドの上で相手に自分の気持ちをきちんと伝えられるかどうかは、普段相手に自分の要求をちゃんと言えるかということときっちりつながっていると思ってるんです。相手に何もいえないで生きている人が、突然ベッドの上で大胆になるなんてことはない、実際はね。どうもそれは男の夢らしいんですが(個人的に笑)。自分が何を感じていて相手にどうして欲しいか、一番基本のコミュニケーションは身体のコミュニケーションですからそこを大事にしないと生活にももちろん影響があると思っています。避妊に関しては最近「避妊なしやりっぱなしのSEXは性暴力だ」という概念が出てきましたから、避妊がないと性暴力だと訴えてもいいかもしれません。北原さん、続き何かありますか?
北原:まず「避妊なき…」の話なんですが、避妊ってグラデーションがあるなと思ってます。「避妊って膣外射精 なんでしょ」って子が多い。具体的な言葉をつけてくれないと、中学生高校生に避妊しましたかって質問すると「男の子=40%:女の子=20%、が、してます」この開きっておかしいじゃないですか。そこにグラデーションがあるんですよ。質問自体が「コンドームつけましたか?」とか「膣外射精してますか?」とかそういう風にやると、全然違うものがでてくるなと思っているんです。
上野:なるほど、質問してる人が腰が引けてる。
北原:そうなんです。
上野:避妊なきSEXは性暴力ということでいうと、今10代の期待されない妊娠よりも実は30代40代の中絶のほうがもっと多いですから、避妊なきSEXという性暴力を夫にふるわれている女性が実際はこの中にずいぶんいらっしゃるんだろうなとデータを見ると思います。ここにいらっしゃる方はどうか知りませんが。夫に避妊してと言えないならましてやどこが気持ちがいいなんて言えないだろうな。やっぱりフェミになって欲しいですね。
北原:それとは別に、コミュニケーションとエロティックなファンタジーの関係というのをどういう風に解決していくのかと言うところも考えているんです。例えばさっきワークショップやってるなんて言いましたが、そういうところで若いフェミニストの子とAVを一緒に見ているわけです。すると、見てる子が「この女性は主体性がない」なんて言って怒るんですが、いざ自分のファンタジーとか自分のエロティックなことを語るとなると、相手の主体性なんかどうでもよくなったりする。「あたしこうして欲しいのとかきちんと言ってる?」とか聞くとフェミニストの女性であっても「そんなことSEXの最中に言うと、なんかエロっぽくなくなっててヤダ」なんて感じあるわけですよ(笑)。最低限の避妊とかルールがあった上での「私こうしたい」というのがさっきの正しい「SATISFACION」、相手にきちんと伝えてコミュニケーションするのが最上のSEXですってのが、そういう子たちには、ちょっと押し付けっぽく感じられて「コミュニケーションめんどくさいよね」ってのが若い世代にはあるのかなと感じてるんです。
上野:私気配りおんなですので慌てて付け加えますが、(会場に向かって)この中で、セカンドヴァージンになって長い方は?(会場シ~ン・個人的に爆笑)。わかんないかな…。「夫とずいぶん長い間…、このまえあったのはうん10年前かな」ってかたいらっしゃる?と思うんですが…。おもしろいのはSEX調査で、性生活が活発なことと今の人生に対する満足感との間には何の因果関係もないということがわかっております。ですから、やれば豊かだと言うことは全然ないので、やってないからと言って自分の人生を悲惨だと思う必要は全然ない。人生の豊かさはそういうものとは全然別のところにある。SEXは人生の様々なメニューの中のひとつに過ぎない、あったのないのと死ぬの生きるのって話じゃない。一線を越えたからと言って「一生私の面倒見て」とか、「おまえは俺のもんだ」とか言われる筋合いのものじゃないといことですよね。(パネラーの二人に向かって)そういうことって私たちすごく一致してるのよね。(笑)それで、本題に戻りますが、フェミはどうして嫌われると言うことなんですが。フェミバッシングということが各地で起こっています。この中に行政の担当者の方もいらっしゃると思いますが、わりと現場の方はピリピリしておられる。何でこんなに嫌われるんだと思います?
石坂:私昨日東京から青森に来たんですね、空港から市内までタクシーに乗ったんです。行き先のホテルの名前を言ったら、それまでいろいろ話していた運転手さんが急にキッとなって「あ、会議の方ですか?」(爆笑)「あ、ちょっとまぁ、仕事で…」なんて返事して。
上野:今の聞くとあれですね、1995年の北京女性会議 の時の運転手さんの反応を思い出しました。「あ、あの会議の人…」ていう。
石坂:こっちはおたおたする必要なかったんですが、運転手さんに詰問されましてね「あの会議は何をやっているんですか」とか「まぁ、いろいろねぇ…すごい良い内容のものもあったりね(爆笑で聞こえない)…もありますよ(爆笑)」とか。私はさっきも言いましたが男性向きにマンガを描いていますから、男性の読者に支持されないと仕事が成り立たないのでどの辺までだったら読んでもらえるか、その範囲内にどれくらい自分の言いたいことを混ぜ込めるか、最初から妥協策を考えながらやってきていますので、男性から歓迎されていないだろうと言うことは大前提で思っていました。なぜとかはゆっくり考えていたことはないですね。
上野:(会場に向かって)皆さん笑ってらしたけど、皆さん方も「あの会議の人」(爆笑)忘れないでくださいね。ステージの上の人だけじゃないですからね。北原さんどう思います?
北原:フェミニズムバッシングと言うのが起きてなかった時代があるのかどうか知らないんですが、最近の組織的なバッシングが増えていると言うようなことでいいんですよね?
上野:手口が巧妙になってきたということです。進化してます。例えば「男女共同参画を考える女たちの会」なんてのができまして、その会長さんが新聞のインタビューに答えて「やっぱり男らしさ、女らしさって大事にしなくてはいけませんね」と、こうおっしゃるんです(個人的に爆笑・会場は戸惑いのざわめき) 。
北原:(会場の反応に驚きの表情)
北原:フェミニズムの問題というよりは、私は組織だってやってる人たち、保守的な人たちが魅力的に映る時代になっているんだなという風に思っちゃうんです。フェミニズムバッシングというのも、フェミというよりは時代が少し変わってきていて、どう変わってきているかうまくいえませんけど、右翼的保守的な言葉、本質的な言葉が魅力的に映ってしまうような感覚を持つ若い人が増えている。
上野:どうしてそうなっていると思います?
北原:どうしてなんでしょう?私ほんとに知りたいんですけど。「わしズム 」の本なんか読んで研究したんですがわかんないですね。
上野:解説してください。
北原:「わしズム」というのは小林よしのり が編集長の雑誌、表紙に自分の写真がナルシスティックに映ってる雑誌なんですけど、西部 さんとかが書いてる。男らしさ女らしさという物語がないと人は生きていけないという、男女共同参画なんておかしな左翼の運動だとか。どうです、ミズリブさんは?
上野:「(そういう人たちに)男女共同参画社会基本法は日本の文化を破壊する」と言われております。(会場に向かって)皆さん方文化破壊者(笑)。
ミズリブ:何、バッシング?エライ目にあったわよ。フェミバッシングなんてない時代なんかないじゃない。私たち一番痛い思いをしてきたのよ。私あの時のメディアのオヤジども、許してないからね!(笑)。あの時にリブのイメージが矮小化されましたから、リブって言ったらピンクヘルメットって。メディアがどんなことやったか、ちゃんと見て欲しいよ。そういう扱いをされても、「あぁあんな女いるんだ」って、情報が全国の女に伝わるんだって、それを(共感を持って)ちゃんと受け取った女がいたんだ。
上野:ところでね、フェミバッシングがなぜ起きるかを考えているとき、反省するべきなのは誰でしょうかと言うのを考えてみたいと思います。フェミの連中の戦略がまずいからだよって、瀬地山君 なんかが言ってますけど(個人的に笑)。「反省するのはフェミの側だよ。もうちょっと上手にやんなきゃ。僕がやったらもうちょっと上手にやったのに」って言う人もいるんだけど。それとも「嫌われることやっているから当然だろうが、それは聞き手の問題だよ、男に嫌われたくないって男の鼻毛読んでるようじゃなめられちゃう、届かないのが当たり前だろうが」という説と2つあるんですが、どう思います?
北原:送り手の問題と受け手の問題ですよね、私は送り手に立っているのではないですけれども、受け手の問題だと(思います)。だって変わんないですよ。私はフェミニズムが受け入れられる社会ができたときにフェミの役割って終わるじゃないですか。それだから、受けが悪くて当然と思っているんです。
上野:これは覚悟がおありですね。嫌われて当然。ですから、(会場に向かって)皆さんよ~く聞いてってくださいね。嫌われないフェミニストって矛盾ですから(爆笑)。
石坂:もし女の意識というのと男の意識、社会の意識・社会の構造があるとしたら、今女の意識が一番先に行ってると思うんです。先駆者たちの儲けにあやかっている人たちも台頭してはいますが、若い人ほどあまり固くなく、女の人が一番「こういう生き方はいやだ」と「こういうものを獲得したい」と一番敏感に貪欲に手に入れかけているんだろうと思うんです。(女が)旧態然としていれば(自分自身の中に)あまり矛盾はできないですむ、女の欲望を自覚しないで、(女が)我慢している状態で男の人たちは社会をつくっていたんですが、その極めてはっきりとずれができている。男の人たちがそれに対して動揺したり、「強くなって生意気になってきた」って言ってうろたえるのも致し方ないかなと。でも歴史を考えれば女の人が強気になったんじゃなくて圧倒的に弱い時代の方が長かったわけで、まだ対等のところに行っていないにも関わらず、そういう風に意識の差がいろんな現象を出すんだろうと思います。社会全体の意識とか受け皿的な構造がもっと遅れているわけですから、致し方ないなと。現場は現実とちょっとづつ折り合いをつけていくかと言うことしかないと思います。
上野:私はこう思ったんです。フェミバッシングの質が段々変わってきた。進化してるとう言い方は変でしたが。やっぱ、ここんとこは保守が強くなったのではなくて危機感を覚えるだけの理由が登場してきたと。女が本気で力をつけてきたからだと思うんです。逆が、いままでは「おめこ 」ぼし…あぁ、やらしいなぁこの言葉(個人的に大爆笑・会場反応なし)(…間…)わかってる人は判ってると思いますが。お目こぼしがあっただけだから、そうじゃなくなってきた。例えばこれから先来年統一地方選があります。女性候補者が出たりすると議員定数決まっているじゃないですか、女性が当選すれば誰かに出て行ってもらわなければならないわけです。そうすると本気で危機感を感じているオヤジたちが組織的に反撃にでているんだろうなというのを、辻本バッシングと真紀子バッシング に感じました。(パラパラ拍手)石坂さん?
石坂:上野さんも私も清美ちゃんの友人ですが、北原さんもそうですね。辻本さんのやられ方を見ていると自民党のおじさんたちほんとに恐かったんだと、ほんとにこういう女のこのことを嫌っていたんだなと。普通は政治的に画策と言うのはもっと巧妙にですね裏で手を回してとかなのに、本気にやったら、あんな思いっきり表舞台で引き摺り下ろされると言うことが驚きでした。
上野:なりふりかまわぬって感じでしたね。ほんとに皆さんがたもこう思っていてください。かわいがられている間は無害な私(笑)。嫌がられ始めるとほんとに力がついてきた証拠。逆風は実力の証し(拍手)。私もうひとつ30代の人見て思ってるんですよ。私たちの世代って女がまとめて差別されました。女が4年制大学なんて、行ったら最後嫁にいけない、職にも就けない。学歴逆詐称なんてこともあって、高卒と偽って仕事についた人たちも多かった。それが男女雇用機会均等法 なんてのができて、「(オヤジ口調で)君、頑張る?男なみになりたいんだったら女捨てておいで、そしたら男と同じように扱ってあげるよ」という風になってきて一見見た目は女の選択肢が増えてきたように思いますが、かえって女のパワーが女同士の連帯に向かわないで女が他の女を出し抜くために向かっていくといういや~な感じがするの。この出し抜きのモデルが林真理子だと思っているわけです。だから、斉藤美奈子 さんみたいに「上野千鶴子と林真理子はネガとポジでおんなじよ 」って言って欲しくないんだよね(個人的に大爆笑)。
北原:そうですよね、あの新聞記事 ですよね。出し抜きたいと言う気持ちは私はとても身近に感じていて、バブルがはじけたといっても大学出て自然に一流企業に入って、ちょうど10年ですよね、10年たった時にぽつぽつと結婚して会社を辞めていく人たちを見ていると現実と突きつけられている感じをよく友達を見てると思いました。あと、30代ということで子育てがあるじゃないですか、そのときの選択肢が多くて30代生きてくの大変じゃないですか、先暗いって感じですよね、
上野:じゃ、30代相手にしないで、10代に希望を託すか?反論がでそうですが、ところで本日のメインテーマですが「次の世代にフェミニズムをどう手渡すか」そのやり方、稚拙だとかこれじゃ反発買うよとか言われていたんだけど、これについてはフェミのメッセージを受け取る当事者としてどうしたらいいだろうか。例えば同世代の女の人たちにフェミのメッセージを手渡すのはどうすればいいだろうかをお二人に考えてもらいたいのですが、その前に、ミズリブ。
ミズリブ:え~?次の世代?関係ないわよ、大きなお世話よ。私たちは自己解放のためだけに戦ってきたの。自分を救うのは自分だけよ。自分が救いたい人間がかってにやればいいじゃない。私たちは私たちのためにやってきたんだから、若い連中が戦いたくなかった
らそれは自業自得ってもんじゃない?彼らは彼らで自分でやればいいのよ。私たちの後姿だけみてればいいの。
上野:って、いうかも。(石坂笑っている)なんで笑うの?
石坂:あっけに取られてるんです、(笑いながら)人格変わるみたいなところありますよね千鶴ちゃん(爆笑)。若い世代の人にどう伝えるか、若い女性に特にフェミニズムをどう伝えるかと言うことを考えると、逆のことは日常茶飯事であるわけです。若い男たちに逆フェミを教えるようなことは慢性的にある。みんなそういう空気を吸っている。刷り込みと言ってもいい。私は男性誌で仕事してますからいつもワンパターンでこういう女が呼び込まれるんだろうってずっと不満に思っていたんです。必ずあるんです、アイドルの水着の写真。グラビアですね、中で表紙の水着姿で映っている必ずあるポーズ。女の子がきゅっとかがんで胸の谷間を強調するポーズ必ずあるんです。私も自分のマンガを描いてるときに編集の人によく注文されます。「ちょっと色っぽく、角度で女の子の胸を強調して」って言われたりしてます。何で男ってそれが好きなのかなってこんなワンパターンでこれくらいの程度で満足してるのか、単純だなって。ところがうちの息子が4歳の時です。うちの子もおっぱいとても好きなんです。だいたい小さな子はお母さんのおっぱい好きですよね。特に息子はブラジャーつきのおっぱいと言うのが好きだった(笑)。
上野:変態だよ(爆笑)。
石坂:私はめんどくさいのであんまりブラジャーしてないんですが、たまたま外出する時にブラジャーしてると向こうからタ~ッと走ってきてがばっと抱きついてくるんです。ある日がばっと抱きついて「ママ、こうやってやって」ってそのポーズをするんです(大爆笑)。私暇だったから「いいよっ」ってやってやったんですが、はふはふ言いながらうれしそうにしてるんです。それで「ママ、今日寝るときもブラジャーしてて」って言うんです「夜寝るときはめんどくさいからいやだ。窮屈だから、ブラジャー貸してあげるからブラジャー持って寝なよ。何色がいい?」「黒」(爆笑)。4歳ですよ、私その時愕然としたんですけど、私は女の子だからとか男の子だからなんて育ててるつもりはなかったんですが、決定的に彼は黒のブラジャーをした女の人がこういう角度でやってるのをどっかで見ちゃって反応しちゃったんでしょね。男はやっぱりおろかだなって思ったんですけど。それが悪いとは言いませんよ、性癖はいろいろあってかまいません。朗らかに見守ってあげたいと思います(笑)。その逆フェミ情報は当然のように、女の子は男の子にとってかわいくあるものであるというのが慢性的にある。さっき言ったように逆風に耐えている、かっこいい女性が増えなくてはだめだと思うんです。いろんなことをやって、必ずしもフェミ専門、入院中ではなくても趣味でやってる程度でもかまわない、いろんなグラデーションいっぱいあってかまわないんですが、非常に魅力的に愉快にかっこよく楽しく生きてる女性、大人の女も悪くないなと思わせることしかないと思うんです。
上野:今のってほんとにそうね。「フェミってやると、人生が生き辛くなるんでしょう?」とかいう人に会うんですよね。だから皆さん方一人一人にフェミってやるとこんなに明るく元気になるのよって顔して生きててもらわないと、ね。
北原:必要ない人にフェミは必要ないと思うんですが、ほんとそのとおりだと思うんですよ。今回のタイトルに若い世代にどうやって伝えるか、ほんとに大きなお世話だと思うんです。今ミズリブの話を聞いていて思ったんですが、覚悟を決めて私は私で生きるのよって私を決めるのは私だけよって気分のところで生きていける、それによって辻本さんのようなバッシングを受けないような社会をつくっていくためにやっていきたいんですけど、嫌われる覚悟で私は私よって生きていける女が増えることしかないと(パラパラ拍手)。
上野:あぁ、拍手ですね。あと、こういうことをやっていると(ミズリブのかぶりものをかぶりながら)私がリブをコケにしてからかいの対象としてると不愉快な思いをなさる方のいらっしゃるかもしれませんが、ミズリブは私の分身なんです。半分以上は私の本音です。立場上、これをかぶらないで言うとさしさわりがある(個人的に笑)。こういう集まりが段々高齢化していく、私たちの女性学の集まりなんかも、毎年毎年1年ずつ、平均年齢が上がるんです。これじゃイカン!って言う人がいると、「え?どこがいけないんですか?」とか思っちゃったりして。私、もっと若いときは(石坂、北原のパネラーを指して)これくらいのときはSEXの現役世代だからこういうこと喋ってきたんですが、今私の目の前に出てくるのは老後の問題なんです。私の関心というのは、現役の時は産むか産まないか、どんなSEXをするか、男とどんな関係を持つか、結婚するかしないか、どうやって別れるか、というところからずっと動いてきて、今はどうやって老いを迎えるかが、今私の一番切実な関心なんです。そしたらこういうような関心の移り変わりで仲間たちとやっていくことを同窓会といいます。フェミが同窓会でどこが悪いの?何でいちいち下の世代の面倒まで見てやらなきゃいけないの?だって自己解放って自分の問題じゃない?解放されたい人がただやればいいじゃない。何が解放か、私にとってこれが解放でもあんたにとってそれが解放かどうかはわかんないじゃないとこう思うから、やっぱりね私基本的には前向いてやんなきゃだめ、後姿見せてればそれでいいと思ってます。「ただいつも前を向いている上野です」なんちゃって(個人的に笑)。そろそろ時間なので、こんなことうちわで話しててどうする、すばらしい伝統芸能じゃあるまいし、でも今日は役者がそろいましたねぇ。やっぱここだけで話してちゃしょうがない、この会場から一歩外に出るとそこはオヤジ社会です。さあ、最後にお二人に話していただきたいのは、じゃオヤジをどうする?(…間…)どうする、どうする、譲り合ってる場合じゃない。
石坂:私は今ビックコミックオリジナルというところで描いてるんです。私が子どもの頃あの雑誌はおじさん雑誌で、ゴルフなんかやってるおじさんが読んでる雑誌だと思っていたんですけど、ハタと気づいたら自分の年齢がとっくに読者の年齢を越えちゃってたんですね。そこで描いてる私は、オヤジどうする?で、青年誌に描いていたころからオヤジ雑誌に移行していますので、そこで売り込んでちょっとでも読んでもらいたいなぁと思っています。自分の作しか余裕ありません。
上野:すばらしい。これが一番の実践ですね。しかも彼女には漫画という人に真似のできない技量を持っていらっしゃる。オヤジの現場でゲリラ戦を戦っていくという。じゃ石坂さんぜひ期待しましょう。北原さんどうぞ。
北原:オヤジを殺したいと思って生きてたことがあるので、(笑)ほんとにオヤジ=憎むべき対象というのが、血を通してオヤジ社会を憎んでたことがあるので如何に殺していくかです。私は(オヤジ社会が)女の勢力というのをおびえているというのをほんとに実感していて。ほんとに私が切れたりとか怒ったりとか「なんですか!」とちゃんと言うと、おびえるオヤジもいるんだと最近わかってきて、絶滅するまで教育しようとも思ってないんですが、いわれなきことをされた時なんかはちゃんと怒って怯えさせていきたいと思っています(笑)。
ミズリブ:オヤジ?ほっとけばいいのよ。絶滅の危機に瀕する種なんだから、いずれマンモスみたいに淘汰されんのよ。
上野:と、言いたいんだけど結構長生きなんだよね。間違いなく逝っていただけると思うんですが、できれば安楽死してくれたらいいのね、どうも無理心中とかの断末魔を演じたがるのではた迷惑なのよね。できるだけ平和共存しながら人の迷惑にならないでゆっくりと途切れていただきたいな、と。ハードランディングよりソフトランディングしていただきたい、小泉構造改革でも下手なしわ寄せは女どもに寄せないで自分の始末は自分でつけていただきたいと思うんです。どうでしょうか、男女共同参画なんだそうですけど、今会場に男性の方もお顔が見えます。一歩外に出たらそういう方とは違う方がいらっしゃると思います。その中で一人一人が現場でゲリラ戦をやってくるということをしましょうかね(拍手)。
もうちょっとだけ時間があるので、オヤジをどうするの次にもうひとつだけどうしてもお若いお二人に聞きたい。現役世代、つまりまだ産めるという女の方たちに聞いてみたいことがあるんです。子どもがどんどん減っている、こんな世の中じゃ子どもを産みますという気分になれない、少子晩婚化世代のちょっとばっか先を走ってるのが北原さんの世代ですね。どうでしょうか、この先この世の中に子どもを送り出してくれるんでしょうか?それに(パネラーをさしながら)この中に夫子持ちという少数派がいるので、石坂さんなんですけど、私気がついてみたら非婚化世代の一周遅れのトップランナーになってた(笑)。そんなものですが、石坂さんも結局子どもは一人、次まだ予定あります?ですからこの世の中にもし希望というものがあるならそこにどうやって子どもを送り出してもらえるのかということを聞きたいなと思います。
石坂:私は子どもは一人で懲りたほうですね。若い子に早まるなと言っている。厚生省のポスターで「育児をしない男を父と呼ばない」…
上野:別名育児なし(意気地なし)ともいう(笑)。
石坂:私あれ厚生省にしてはよくやったと、あのコピーを作ったのもたぶん女性だろうなと思います。あれくらいのことで世のおじさんたちはブーブーと言ってたらしいですね。そんなことまで疲れている男たちを駆りだすのかって。あれは安室さんのだんなさんでサムさん?私に言わせればあれは手ぬるい、あれはきげんのいい赤ん坊を抱っこしているだけ(笑)。ああなるまでにはどれくらいぐちゃぐちゃのべちゃべちゃの…赤ん坊をあやしてどうしてこんなに女にばかりしわ寄せがくるんだと思ってましたから、ほんとに夫婦仲も悪くなちゃいましたよ。ただですね、私はおもしろかったから。子どもがいなければいない生活を楽しんでました。いなくてラッキーだったこともありますし、いると楽しいこともたくさんあると思ってますので、産んだからには楽しもうと思ってますし産んだからには子どもとも愉快にやっていこうと思っています。私の子は男の子ですけど、できるだけ軟弱なだめ男に、すごくマッチョじゃなくって徴兵制でも始まったら、大泣きしていやだというような子どもにしたいと思ってます。あんまりしつけはしてなくて、でも酒の席のしつけは厳しくしてます。コップがカラっていうと、「ハイ」ってビールをついでくれます(笑)。そういう男の子を一人世の中に送り出せばフェミニズムでも貢献できたかなと(爆笑)。
上野:次の世代にフェミニズムを手渡す一番確実な方法かも知れませんね。
北原:私は社会制度が良くなったり、夫が子育てに参加したり、いろんな方面に。そうすれば少子化止まったり、おじさんたちがが頑張っていいことかも知れないんですけど、社会制度がよくなったからといって私は子どものことはまったく、恐怖心すら感じる人間なので産むことはないだろうと思います。産まないという選択をする人が少ないとやりづらいと思っちゃうんですけど、そういうのは性格もあることなので…。気持ちよく子育てできる環境ができればそれはそれでいいよね、私は勘弁してよって感じ。
上野:はい、あなたはそのほうがいいかもしれません。というわけで少子化が完全に良くなるという見通しもなく(爆笑)。実はもうひとつ介護にも触れようと思ったんですが、(会場に向かって)どうぞ皆さん方、この世代の方たちに(石坂、北原を指しながら)もはや介護は期待しないでくださいね。(会場微妙な反応)そのために介護保険があるんですから(少し笑)。時間が参りました。どうもこうやって話を聞いてますと、世代を超えてフェミニズムという言葉はそれぞれの自分の言葉で語り合っているという実感をもっていただけたらいいなと思っています。なんか、聞いててイライラしたりムカッと思ったりそうかと思ったりなさったでしょうが、今日は時間の制約もありまして会場からの発言もいただけませんが、会場を一歩出たらどうぞ大声で今日のご感想をお話くださいませ。じゃ、今日はほんとに長い間、表番組を袖にしてきてくださってありがとうございました。(拍手)
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注
1 全体会Aは「平等・開発・平和~より豊かな生き方を求めて」。パネラーは船橋邦子(大阪府男女協働推進連絡会議議長)、鹿嶋敬(日本経済新聞編集委員)、中野麻美(弁護士)、坂東眞理子(内閣府男女共同参画局長)、佐々木誠造(青森市長)の5名。
2 国連総会の採択した世界女性の権利章典。70年代後半に策定・審議され79年国連総会で採択、81年国際的に効力発生。日本は85年批准。ここで上野が75年と言っているのは国連が同年を国際婦人年と定めたこととの流れの発言と思われる。
3 北原みのりの著書に「フェミの嫌われ方」(新水社1400円)がある。それから連想したタイトルか?
4 70年代初頭のウーマンリブの旗手といわれた活動家。国連世界女性会議がメキシコで行なわれた時参加、そのままメキシコで4年暮らした。帰国後鍼灸師となり「れらはるせ」を開設。著書「いのちの女たち―とり乱しウーマンリブ論」「いのちのイメージトレーニング」など。
5 リブとフェミの違いは、以下のサイトがそのニュアンスをうまく伝えている。文末参照(参考①)
http://www.h3.dion.ne.jp/~haneko-i/genkou/2gender2.html
6 ピンクのヘルメットをかぶりTVメディアなどに押しかけて自己主張のみをするバカなおばさん、というイメージがある。子どもの頃、TVで見た記憶がある。
7 高橋留美子 「らんま1/2」や「犬夜叉」で人気の漫画家。「めぞん一刻」は音無響子がヒロイン。掃除・洗濯・裁縫万能、着物の着付けもばっちりできるし、テニスもこなすスーパーウーマン(?)。亡き夫惣一郎の面影を胸に一刻館管理人の職に就きますが、着任早々異常な住人たちの洗礼を受け…。
8 元衆議院議員(社民党・党政審会長も務めた)。大学在学中、アジア諸国をめぐる平和運動「ピースボート」を始める。「新人類サミット」開催。出版企画など多彩な活動を続け、社民党から衆議院議員に当選。土井たか子の秘蔵っ子と言われた。秘書給与流用疑惑で衆議院議員を辞職するまでの顛末は記憶に新しい。
9 料理研究家。26歳の時、14歳年上の男性と結婚。専業主婦のつもりがいつの間にかひとつの家事が「ビジネス」になってしまった。料理番組のほか、化粧品や食品のCMキャラもつとめ、出版した本はベストセラー化、カリスマ主婦と呼ばれる。受ける要因は、プロだけど”フツーであること”、でも”チョットだけ”おしゃれなこと。有元葉子ほどカリスマ性はないし、小林カツ代ほど庶民度は高くない。そして料理は決して難しくなく、フツーの主婦が手軽に作れるのが、はるみ流。
10 早稲田大学大学院文学研究科後期博士課程修了(心理学専攻)。愛知淑徳大学教授。医学博士。著書に「セックス神話解体新書」「ジェンダーの心理学」など。上野との対談「ザ・フェミニズム」もある。
11 セクシャリティが性的欲望・性現象を指すなら、心理学が扱う対象であるという観点により、ジェンダーとセクシャリティの混乱を整理しそれらが構築主義的に解明される最先端まで読者を導こうとする。01年発行、有斐閣選書 1500円
12 マガジンハウスが「キャリアとケッコンだけじゃいや」をキャッチフレーズに88年創刊した女性情報誌。バブル経済の恩恵を受け、ブランド品・グルメ・海外旅行など、従来の「キャリア(仕事)か結婚」という二者択一を超えてより豊かな生活を貪欲に求める女性たちをマーケット業界では「Hanako族」と呼んだ。「クロワッサン」のように女性の自立を掲げることなく消費情報の提供に徹した。
13 85年9月プラザ合意で、ドル高の修正・円高方向への国際的誘導によって円高不況がおこり、対抗手段として、公定歩合の引き下げが行われた。結果、マネーサプライは急増し、だぶついた金が株式や不動産へ流れた。それらの資産価格が、経済の基礎条件から想定される適正価格を大幅に上回る状況。86年以降土地や株式が高騰した時期をバブル経済と呼ぶが、90年以降、地価・株式は急落して「バブルがはじけた」。
14 フランスの高級ブランド、ルイ・ヴィトンの世界最大級の店舗が02年9月1日、東京・表参道にオープンした。前日からの徹夜組を含め、開店を待ちわびて女性客ら限定品目当てに約1500人並び、その列が約1キロに。前日の夕方から母親(49)と店の前に並んだという東京都府中市の女子大生(23)は「絶対にバッグが欲しい。友だちに自慢できる」と入店が待ち切れない様子。昼食やいす持参で駆け付けた人たちの姿も。
15 「週刊女性」01年11月6日号 「独占激白”石原慎太郎都知事吠える!”」 より抜粋
「これは僕がいってるんじゃなくて、松井孝典がいってるんだけど、”文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババァ”なんだそうだ。”女性が生殖能力を失っても生きているってのは無駄で罪です”って。男は80、90歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子供を生む能力はない。そんな人間が、きんさん、ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害だって…。なるほどとは思うけど、政治家としてはいえないわね(笑い)。」
16 不明。
17 「ジョアンナの愛し方―男性があなたに夢中になる203の方法」 小学館文庫381円
オリビア・セントクレア(著)与えられるセックスよりも、与えるセックスのほうがずっと素晴らしい。そのための方策をつぶさに、しかも具体的に語って衝撃をあたえたベストセラーの文庫化。セクシーな女性が、お手本を見せてあげなければ女の悦ばせ方がわからない―男なんてそんなもの。女性によってはじめて書かれた、女性自身のための素晴らしいセックス203の方法論。
18 サティスファクション―究極の愛の芸術 2300円 発行アーティストハウス
キム・キャトラル(著)。アメリカで人気のテレビ番組「Sex and the City」でサマンサ役を演じる女優キム・キャトラルと彼女の夫でジャズミュージシャンのマーク・レヴィンソンによって書かれた。 オープンなコミュニケーション、信頼、愛、互いを喜ばせることへの興味、といったシンプルなことがセックスライフを豊かにし、カップルをより深い方向へ導くと言う。しかし、多くの女性がセックスについて質問されたとき、不満を抱いていると告白しているのが現状だ。性的な欲望を恋人に伝えるのは難しいが、2人でオープンにこの問題について話し続けることが、よりよい関係を保つためには必要で、男性がほんの少し、知識を身につけることで、2人の関係はさらに良くなっていくという。
19 昭和8年北海道上砂川生まれ。札幌医科大学在学中の昭和29年、21歳の時に処女作『イタンキ浜にて』を発表する。その後、医師となってからも、同人誌「くりま」を通じて多くの小説を発表し、昭和40年『死化粧』で第12回新潮同人雑誌賞を受賞し文壇デビューを果たす。昭和45年に『光と影』で第63回直木賞受賞。『遠き落日』で第14回吉川英治文学賞受賞。その後は『ひとひらの雪』『うたかた』に代表される、男女の愛と性の深淵や人間の持つ情念を描いた、情痴文学を確立。日本経済新聞に連載され、大ブームを巻き起こした『失楽園』は、この分野における代表作。私は「ケッ」って思うよ、中身。
20 性交の途中で射精する直前に膣から男性性器を抜去して、膣外に射精する方法。しかし、避妊効果は十分でなく、長期的には妊娠してしまう場合が多く避妊法として認めることができない。また性感染症の視点からもすすめられない。が、避妊法と思っている若者が多いらしい。
21 85年にナイロビで開かれた第3回世界女性会議で、国連婦人の10年最終年にあたり世界行動計画の実施期限の2000年までの延長と実施上のガイドライン「ナイロビ将来戦略」を採択した。そのガイドラインに基づく実施状況の評価と更に必要な戦略を確認したのは95年に開かれた北京女性会議である。
22 「女」に何らかの本質があるという本質主義的フェミニズムの流れが一時あったが、構築主義的アプローチによる見直しがあったことは大方の理解をまだ得ていないと思う。特に高齢の参加者が多かった会場は「そのせりふのどこがいけないのか理解しかねる」という反応だったように思う。
23 漫画、音楽、思想、日本を束ねる知的娯楽本(自称)。みうらじゅんの漫画「断崖先生」、秋本治と小林よしのりの漫画論対談、西部邁の時評などを収録する。幻冬社発行。
24 漫画家。「こまわりくん」などのギャグマンガを描いていたが、「ゴーマニズム宣言」で薬害エイズ問題を漫画化して支援し一躍有名になる。その後南京大虐殺問題など発言が政治・右傾化傾向が強くなり、「新しい歴史教科書をつくる会」発足には中心メンバーとして関わる。
25 西部邁 評論家。秋明大学教授。新保守主義者。「新しい歴史教科書をつくる会」理事。「朝まで生テレビ」に準レギュラー出演。
26 瀬地山角 東京大学大学院総合文化研究科助教授。ジェンダー論、東アジア研究。著書は「東アジアの家父長制」「フェミニズムコレクション」「お笑いジェンダー論」等。
27 関西弁で「おめこ」は「おまんこ」と同じ。上野は富山県出身、京都大学大学院終了後、京都精華大学等経ているため、関西生活あり。
28 小泉純一郎を総理にした立役者だが、外務大臣であった当時外務省を牛耳っていた鈴木宗雄との確執などから大臣を更迭される。その後、秘書を関連会社から出向扱いで勤務させたことが発覚し、一気にバッシングの勢いが強まった。自民党の党籍停止処分を受け、議員辞職し、議員生命を失ったとまで言われている。
29 辻本が筑紫哲也編集「週刊金曜日」で連載していたコラムを始め、ホームページなどにイラストを提供していた。
30募集・採用から定年・退職・解雇に至る女性差別を禁止する法律。85年日本が国連の女性差別撤廃条約を批准する段階で、それまでの法律が条約に違反すると理解されたため、同年制定された。
31 56年新潟市生まれ。成城大学経済学部卒業。文芸評論家。著書に「妊娠小説」「紅一点論」「読者は踊る」等がある。
32 斉藤美奈子著:「文壇アイドル論」で80年を駆け抜けた「女の時代」の旗手の一人が林眞理子であり、もう一人の旗手が上野と対比させている。「成り上がった」林と「(アカデミズムから)降りてきた」上野、男社会に受け入れられたい願望を露にして逆に男社会からバッシングを受けた林と、男社会を鋭く批判したわりに男社会で居場所を確保した上野は、「女の時代」のネガとポジであると評している。
33 朝日新聞02年8月20日夕刊「女の時代」のネガとポジ~元“宿敵”に見る共通項(単眼複眼)