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村上春樹短編はさようなら

この本を最初に知ったのはアマゾンの予約本として。

本屋さんで、平積みされていたのをみたら、不思議に思っただろうな。どうしてこんな表紙?

安西水丸さんじゃないもんなぁ、もう。

微妙な違和感を持ちつつ、予約して届いて読んで…。

 

おもしろい短編もいくつもありました。でも書下ろしのは…判断する者じゃないとは思うけど、短編集はもう買うのをやめよう、と思った。読み終えても本棚には戻さず、ブックオフ行に用意してある段ボール箱の一番上にそっと置く。

 

なんか、さみしいね。深み読みもできるんだろうし、忘れられない村上短編もある。でも、よく考えたらその短編も「好き」で、忘れられないのではなかったなぁ。なんだろうこの不思議な読後感。

むかしむかし~本の感想⑰

2002年から2004年ごろに書いていた本の感想

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万葉線とRACDA高岡5年間の軌跡  
           
       編著・発行 路面電車と都市の未来を考える会・高岡  ¥1500
日立電鉄が唐突にちん電の廃止を決定し、存続を願う動きがいろいろ出てきた。2004年4月24日市内で行われたちん電の存続を願う高校生たちの学習会後の意見交換の場で紹介された本。ちん電の存続を願うサイトの運営のお手伝いをしている関係で購入し読んでみた。文章は読みやすいが運動に関わった人物がたくさん出てきて、覚えるのが大変。(覚えなくても読めることは読める)これが宮部みゆきの小説なんかだと人物描写がしっかり入るのでどんなに大勢登場人物が増えても大丈夫なんだけど…と妙なところで小説の読みやすさを感じたり…。

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交通弱者(この弱者って言葉は嫌いだけど、でも解りやすいのでつい使っちゃう)のためにも、今ある公共交通機関をできるだけ有効に使うにはどうしたらいいのか?ちん電を残したいとは思っても、一市民の自分ができることってあるんだろうか?一市民の小さな力だけじゃ資本や経済の論理に勝てるわけがない、など目の前に立ちはだかる壁をクリアするには具体的にいったいどうすればいいんだろう?そんな疑問にどうぞ。この本を読むと何かが見つかります。

廃止が決定的だった路面電車・万葉線が存続に至った経緯を、時の流れを丁寧に追うレポの形で書き表してあります。6章からなる本の構成は、1~4章しのびよる廃線が存続決定されるまでのいきさつ。5章は一転して存続が決まったものの、存続決定は逆に市民運動としての存続という目標を失うことでもあり、そこからの市民運動の深め方を追ったもの。「『自治体と企業』を第3セクター、『自治体と住民』を第4セクター、『住民と企業』を第5セクターと言うなら、万葉線は新しい3セクを目指す」。そして6章は「万葉線を活かしたまちづくりへの挑戦」となっています。

ちん電の問題も一私鉄の存廃という見方ではなく、まちづくりとしての視点、さらに一人の人間がある問題に面した時、その問題にどう対処・行動するのかという生き方を問われる視点、移動の自由の確保という人権問題まで様々な視点で広がりを持っていく必要があるのでしょう。今地元の高校生たちが懸命に存続のための行動を起こしています。その行動はたとえちん電の廃止が決定になったとしても、必ずその子達の中に何かを残すに違いないのです。

むかしむかし~本の感想⑯

2002年~2004年ごろに書いていた本の感想

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毎月新聞 / 佐藤雅彦 毎日新聞社 ¥1300 
子どもの頃から、なぜかうちで取ってたのは毎日新聞だった。結婚して感じた違和感のひとつ、新聞は朝日以外は読まないという夫だったこと。そんなことはどうでもいいんだけど…。毎日新聞に月一で連載だったものをまとめたもの。新聞コラムの書籍化なんてありふれているけど、これは連載中から目を引いた。なぜって、新聞の中に新聞があるんだもの。

ミニコミの新聞の体裁を取ったレイアウトのコラムが本当の新聞の中に、面として存在するって言うだけで、充分目を引くよねぇ。書いているのはCMフプランナーで名をはせた佐藤雅彦。名前を聞いてもピンと来ないかもしれませんが、例えば「だんご3兄弟」を書いた人、ポリンキーというスナック菓子のCMなんかは「あぁあれ」って思う人が多いんじゃないでしょうか。

新聞のコラムだから読みやすいのは当たり前だけど、例えば朝日のT声J語みたいな、知性と教養とついでに権威の匂いがプンプンする、「ははぁ~」ってひれ伏したくなるようなコラムではまったくない。CMプランナーという職業がなるほどと思える視点の転換があふれた、そういう意味で目からウロコの本。

実は友達宛に同じような新聞型の手紙を連載で送っていたことがあって、なんか自分のやり方も結構いいセンいってたんじゃないかなんて、これはちょっとうれしい自己満足だけど。買うこともないなって思ってはいたので、本屋で立ち読みしていた。立ち読み2回で充分読みきれちゃう分量なのでね。でも、視点のすばらしさがあふれていて、これはとっとくと、ネタ本に使えるかも、なんて不純な動機で手に入れた。なるほどなるほどの1時間になりますよ。

むかしむかし~本の感想⑮

2002年~2004年ごろに書いていた本の感想

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家族狩り 1~5部 天童荒太 新潮社文庫 (¥476~¥667)
ついに茨城県でも起こってしまった家族をめぐる事件。自分にとっても身近な土浦と水戸の事件で、子どもたちの通う学校でも事件の関係者と近い人が多く、起こってしまった事件の波を感じないではいられない。

子どもによる家族惨殺事件の真相を探る5部作は、このような事件が起こったときに訳知り顔でコメントするTVの出演者よりずっとずっと真実に近いものを伝えているに違いない。閉ざされた家族と言う密室の中で、あるいは、社会の中で孤立した家族の中に何が起こっていて、その当事者たちはいったい何を感じているのか、これほどリアルに書いた作品は初めてではないだろうか。ある意味事件を追ったルポよりも事実に近い気がする。

肯定的に受け入れられない子どものどうしようもない行き場のない気持ちも、親たちの当惑も、何とかしたいと動く周りの人々の気持ちも、それぞれの思いがしみるように伝わってくる。登場人物の語る言葉一言一言がまるで自分が発した言葉のように思えるくらいリアルである。

それゆえ、読み進むのはしんどい。解るがゆえに、この先にあるのは闇だけのような気がしてきて、読み続けるのが辛くなる。それでも、第5部のタイトル「まだ遠い光」を求めて読み続ける、考え続けることが「まだ遠い光」に近づく唯一の方法だから。

むかしむかし~本の感想⑭

2002年~2004年ごろに書いていた本の感想

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考えることで楽になろう / 藤野美奈子 (協力=考えるプロ 西研) 
                  メディアファクトリー ¥1200
「悩むことと考えることは別のことである」って西研の別の本にあって、月並みだけど「目からうろこ」。今まで費やしたほとんどの時間は「悩んで」いただけで、問題解決に向けて考えていたわけではなかったんだなぁって、その時思った。

西研が漫画家藤野と組んで、考えるコツを教えてくださる。
①感情の中に動いているものを感じてみる。
②なるべく正直に、公平に!
③いったい何が「核心」なのかを、言葉でつめていく。
④どうすることが「私にとって」いちばんいいか、を考える。
⑤そのさい、私にできること/できないこと、を考えてみる。
⑥ゆっくりと気持ちが形をなしていくのを待つ、という手もある。

藤野が思考の過程を、すべて上手く言葉にしてあるので、それをたどっていくうちに、読み手も考えるレッスンが少しできるようになる、気がした。頭の中で、ぐるぐると考えのかけらが渦巻いているのままでは、本当は考えることにはならないんだなぁ。言葉にする、話し言葉でも、もちろん文字ならさらにいい、兎に角言葉にすることが、考えることには大切。

自分ではわかったような気がすることを人に説明しようとして、言葉に詰まるというか、上手く説明できないことってしょっちゅう。気になる言葉を書き取ることからはじめ、きちんと考えてみようって、改めて思った・・・のは、ほぼ1年前。ずっとコンテンツにあげたまま、ほったらかしにしてあったのも、それはそれで何かの必然のような理由が在ったのかもしれない。今年こそ、考えよう、そして楽になろう。

むかしむかし~本の感想⑬

2002年~2004年ごろに書いていた本の感想

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博士の愛した数式 小川洋子著 新潮社 ¥1500
事故の後遺症で、記憶が80分しか持たなくなってしまった「博士」とそこへ派遣された家政婦、そしていつしか博士になついてしまい博士から「ルート」と呼ばれる家政婦の子ども、その3人が過ごす80分の連なりとしての時間。

人間は記憶の総体として今在るのだけれど、その記憶がない、思い出が作れないということは、不幸なのだろうか?この物語を読んでいる限り、そうとはいえないと思った。3人が繰り返す80分は永遠に続く「今」でもある。記憶の限界のかなたにある過去にとらわれることなく、今を穏やかに楽しく過ごせるとしたら、ある意味なんて幸せなことだろうとさえ思う。

「過去はきれいさっぱり水に流して」なんてよく耳にするけれど、流したはずがどろどろと渦まいてよどんでいたりするほうが多い。忘れられたらどんなに楽になるかと思う過去の出来事だってたくさんあるに違いない。それほど記憶というものに振り回されているのが人間かも知れない。過去を引きずることなく、今を大切に生きることが、生きることのすべてという、簡単だけれどもなかななできない生き方を隠喩のように物語った本。

読み終えて、なんともいえないすがすがしさが残る。

むかしむかし~本の感想⑫

2002年~2004年ごろに書いていた本の感想

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グロテスク / 桐野夏生 文芸春秋 ¥1900 
佐野眞一の「東電OL殺人事件」(新潮社)はノンフィクション。同じ題材を元にしたと思える「グロテスク」はノンフィクションより真実を伝えていると思う。文学という芸術はノンフィクションという自然を越えるんですね。(あらすじはこちら:Amazon)

絶世の美女ユリ子・不細工なユリ子の姉・不美人で努力家和恵・そこそこ美人で頭脳明晰ミツルの4人の女性が登場人物。物語はユリ子の姉の日記の形で進められるが、後半4人のそれぞれの手記のような物語が語られるにつれて、姉は真実の語り手ではないことがわかってくる。

和恵の人生が痛々しい。プライドが高く尊大な父のファザコンで、しか~し自身は女だから、所詮父の望む姿にはなりえない、だって父は男、和恵は女だから。父の価値観は「努力は成功への道」と信じて疑わなかった戦後の高度成長期のもの、アメリカの薄っぺらい自己実現思想をそのまんまいただいたものだったのだろうけど、その価値観のままに努力を重ねる和恵の姿はこっけいを通りこして、哀れに感じる。

世の中は理不尽、努力で越えられないものもある、というより越えられないものの方が大きい。そのことを理解できない、いや理解することは「負け」になるので、勝利を目指して逆に崩壊していく和恵はすばらしくリアル。皮膚のすぐそばまで和恵の輪郭が近づいているように思える。

また、ユリ子の姉の屈折した性格は、読んでいる間中、私にとっては一番身近に思えたものだった。悪意のこもった策略で人を貶める、こういう欲求が自分の奥底に善人の皮をかぶって潜んでいることを認めるまでは、長く苦しい時間が必要だったなぁ、なんて過ぎた日々を振り返ったりして・・・(^_^;)。

男女平等思想なんて絵に書いたモチ。男女のほかにも差別なんてそこらじゅうにあふれている。美しい人とそうでない人。頭のいい人とそうでない人。黄色人種と白人。金持ちとそうでない人。中年女とギャル。人々のいるところ、すべての関係の中に差別があり、自分はどんな権力(美?金?年齢?etc)を持っているかの引っ張り合いパワーゲームが発生する。

般若心経…四苦八苦の世界に生きているのね、私たち。

むかしむかし~本の感想⑪

2002年~2004年ごろに書いていた本の感想

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できるかなV3 / 西原理恵子 扶桑社 ¥952 
西原さんのできるかなシリーズは欠かさず読んでるんだけど、今回はさすがにそのヴァージョンアップ具合に,恐れ入りました。だって「脱税できるかな」なんだもの。そこまでやるかぁって、腹が据わってない庶民の私のまじめでいい子部分が、拒否感を感じさせるほどの、わがままぶり。それにしても、税務署って値切ると税金まけてくれるんだぁ・・・。

今回のトライというか、できるかな挑戦は、面白いのとぜ~んぜん面白くないのと、くっきりすっきり分かれてしまった。脱税バトルとキャバレーのホステスできるかなは面白かったけど、富士山のぼりや熱気球編はおもろくもなんともない。

富士山登山編では唯一面白かったのが、西原さんの体脂肪率40%で、「私の4割が、私じゃない」ってつぶやくところ。40%は行かなくても、細目とは言いがたい自分を振り返って、「私も〇割は、私じゃなくて脂肪なんだ」って思った・・・。正月のだらだら生活の中で読んだので、一念発起のダイエット敢行を思ったもんね。(何度目だろう・・・)

むかしむかし~本の感想⑩

2002年から2004年ごろに書いていた本の感想

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誰か / 宮部みゆき 実業之日本社 ¥1524 
模倣犯とブレイブ・ストーリーで宮部みゆきにはさようならしたつもりだったんだけど、気持ちにゆとりがなくて、でも文字を見ていたいときなんかには、宮部のような物語が軽くていいんだよね。文句言いながら、読んじゃった。

財閥の会長の個人運転手が自転車のひき逃げで亡くなった。その二人の娘が犯人を捜すために父の思い出をつづった本を出版したいと言い出して…。財閥の娘婿で元出版社勤務の三郎にそのおはちが回ってきて、探っていくうちに見えてくる人生模様。

二人の姉妹が、姉は妹を両親の「一番星として愛されていた」とうらみ、妹は、両親が姉ばかりを頼りにするとねたんでいた、そういう育ち方って、きっとどこでもあることなんだろう。秘密を抱えてしまった時、家族ってかなり危険な人間関係になるんだってのも、その通り。その通りだとは思うけど…すらすらと一気に読めてしまう語り口の上手さはもうけなしようもないけど、それでも、前の2作も同じように、ラストというか決着のつけ方になんともやりきれなさしか残らない。人間模様を書いて、切なくなるならそれはそれでいいんだけど、切ないんではないんだよなぁ、読後感が。

宮部って人間が嫌いなんだろうか?もうちょっと、ほんのちょっとでもいいから、明るいきざしみたいなのを残してエンディングになってもらいたいなぁ。

なぞの解決の時、お互いを恨みながら育ってきた姉妹の姉に向かって三郎が言うせりふが引っかかる。ひどい男に二人して騙されて振り回されている姉妹の姉に、父親だったら一番先にその男をぶん殴る、と言っているんだけど、そういうことじゃないんだなぁ。親の愛が欲しくて、親の愛を独占したくて、お互いを傷つけあってる姉妹には、親に愛されているって実感がないんだ。父親らしく、ひどい男をぶん殴っても、そんなことで愛情が伝わる訳じゃない。そんなことが慰めになると思って言ってる三郎がずいぶんと薄っぺらに感じてしまうせりふで、そのせりふが物語の結末を飾るように書かれてるから、全体が薄っぺらい印象になっちゃうのね。同じ家族を描くんでも、重松清のほうが取材が丁寧って感じちゃう。

むかしむかし~本の感想⑨

2002年から2004年ごろに書いていた本の感想

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あらしのよるに(1~6巻) / 木村裕一 各¥1000
ある激しい嵐の夜、山道に迷ったやぎがまっくらな小屋で休んでいると、誰かが逃げ込んできました。たったひとりでこころぼそかったやぎはほっとして、その誰かに話しかけ意気投合して友達になります。そして嵐がさった夜明け前、次に会う日を約束して別れます。その誰かはオオカミだったのですが…。

大人はつい深読みをします。相手が誰ともわからない真っ暗な中で友達になる、それって人間関係そのものです。初めましてって会った人を、見た目でこんな人に違いないって「闇夜」をつくっているのは実は自分の先入観で、目に見えるものが逆に相手の心の奥底のやさしさを隠してしまうこともある。

その後のやぎとオオカミは、「あんな奴と友達だなんて」と、仲間から非難されます。他の人と違うこと、違う意見を言ったり、感じ方をすることはなかなか受け入れてもらえないんですね。この絵本の二匹が感じている息苦しさは日本の社会の閉塞感なのでしょうか。

シリーズ全6冊が最近完結しました。これは本当の友達・パートナーとめぐり合えた幸せな二人の友情物語、ラブストーリーです。オオカミになりきって読み終えた私は、ラストうるうるしてしまいました。「あなたに出会えて本当によかった」っていえる友達いますか?

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